行政庁の処分に違法や不当な点があれば、通常はその処分を取り消したり、変更したりすることが検討されます。しかし、取り消すことで社会全体に重大な支障が生じる場合まで、必ず処分を取り消すとは限りません。このような例外的な裁決が事情裁決です。
事情裁決とは
違法・不当な処分を取り消さずに審査請求を棄却する裁決
事情裁決とは、審査請求の対象となった処分が違法または不当であると認めながら、処分を取り消したり撤廃したりすると公の利益に著しい障害が生じる場合に、審査請求を棄却する裁決です。行政不服審査法45条3項が根拠となります。
「却下」ではなく「棄却」である点に注意
却下裁決は、審査請求の期間を過ぎているなど、請求自体が不適法な場合に、内容を判断せず退けるものです。一方、事情裁決は、処分が違法または不当かどうかを審査したうえで、例外的に請求を棄却します。
したがって、事情裁決で棄却されたからといって、「処分は適法だった」と判断されたわけではありません。
事情裁決が認められる条件
処分が違法または不当であること
事情裁決は、処分に問題がない場合の通常の棄却裁決ではありません。審査庁が、対象となった処分を違法または不当と認めていることが前提です。
取消しによって公の利益に著しい障害が生じること
処分を取り消すことで、社会全体の利益に重大な支障が生じる必要があります。「公の利益に著しい障害」があることが重要です。
損害などを考慮しても、取消しが公共の福祉に適合しないこと
審査庁は、取消しによって生じる審査請求人の損害の程度、その損害を賠償または防止する方法・程度、その他一切の事情を考慮します。そのうえで、取消しが公共の福祉に適合しないと判断した場合に限り、事情裁決が認められます。
事情裁決では、なぜ違法・不当な処分を取り消さないのか
公益や審査請求人の損害などを考慮して判断するため
事情裁決は、違法・不当な処分を無条件に適法とする制度ではありません。処分を取り消した場合に生じる公の利益への著しい障害や、審査請求人が受ける損害、その損害の賠償・防止の方法などを考慮し、取消しが公共の福祉に適合するかを判断します。
処分の違法・不当は裁決で明示されるため
事情裁決をする場合、審査庁は裁決の主文で、その処分が違法または不当であることを宣言しなければなりません。つまり、処分を取り消さないことと、処分を適法と認めることは別です。
事情裁決のポイント
- 違法・不当な処分についての、例外的な棄却裁決である
- 取消しにより公の利益へ著しい障害が生じることが必要
- 審査請求人の損害や、その賠償・防止の方法も考慮される
- 処分が違法または不当であることは、裁決の主文で宣言される
まとめ
事情裁決とは、違法または不当な処分であっても、取り消すことが公共の福祉に適合しない場合に、審査請求を棄却する裁決です。ただし、処分が適法だったと判断するものではありません。公の利益への著しい障害や、審査請求人の損害などを慎重に考慮したうえで、例外的に認められます。
