取消訴訟の訴訟要件とは?訴えが却下される条件をわかりやすく解説

行政庁の処分や裁決を取り消すための訴訟を取消訴訟といいます。ただし、訴訟を起こせば必ず処分の違法性を判断してもらえるわけではありません。

取消訴訟には、適法に提起するための前提条件があります。これが訴訟要件です。訴訟要件を欠くと、裁判所は本案を審理せず、訴えを「不適法」として却下します。

取消訴訟の訴訟要件とは

訴訟要件を満たさないと「却下」される

訴訟要件は、取消訴訟を適法に進めるための条件です。要件を満たさない場合、裁判所は処分が違法かどうかを判断しません。

なお、「却下」と「棄却」は異なります。却下は訴訟の入口で不適法として退けること、棄却は適法な訴訟について内容を審理したうえで、請求に理由がないとして退けることです。

取消訴訟の前提となる「法律上の争訟」

取消訴訟は、司法権の対象となる法律上の争訟でなければなりません。これは、憲法76条1項や裁判所法3条との関係で求められる前提です。

取消訴訟の対象・当事者に関する訴訟要件

処分性:取消訴訟の対象となる「処分」があるか

行政事件訴訟法3条2項によれば、取消訴訟の対象は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」です。一般に、次の要素を満たす行為に処分性が認められます。

  • 法律に基づく行為である
  • 国民に対して行われる
  • 直接行われる
  • 権利義務を形成し、またはその範囲を確定する

営業許可の取消しや申請の拒否、違反建築物の除去命令などは、処分性が認められやすい行為です。

一方、私法上の契約、行政機関内部の通達や協議、一般的な行政立法、行政指導や単なる事実行為は、原則として処分性が認められません。重要なのは名称や形式ではなく、その行為が国民の権利義務に直接、法律上の効果を及ぼすかどうかです。

処分性が問題になりやすい行為と例外

原則に対し、権力的な事実行為は処分性が認められる可能性があります。また、行政指導や通知であっても、法令上の仕組みによって権利義務に直接影響を及ぼす場合は、例外的に処分性が認められることがあります。

条例、告示、行政計画も原則は一般的な規範や計画にすぎません。しかし、特定の者に直接影響を与えたり、後続の処分を待たずに具体的な権利制限を発生させたりする場合には、例外的に処分性が認められることがあります。

原告適格:取消しを求める資格があるか

原告適格とは、その処分の取消しを求める法律上の資格です。行政事件訴訟法9条により、処分に不満がある人なら誰でも原告になれるわけではありません。処分によって、法律上保護された利益を侵害される立場にあるかが確認されます。

狭義の訴えの利益:取消しを求める実益があるか

処分性と原告適格があっても、取消判決を得る現実的な意味がなくなっていれば、訴えの利益が否定されることがあります。たとえば、訴訟の途中で処分の効果が消滅し、取消しによって回復できる利益が残っていない場合です。

そのほかの主な訴訟要件

  • 被告適格:誰を被告として訴えるべきかが適切であること(行政事件訴訟法11条)
  • 管轄:法律上、訴えを提起できる裁判所に提起すること(同法12条)
  • 出訴期間:法律で定められた期間内に訴えを提起すること(同法14条)
  • 審査請求前置:法律が先に審査請求をするよう定めている場合、その手続を経ていること(同法8条1項ただし書)

このように、取消訴訟では処分の違法性以前に、対象となる処分、原告としての資格、取消しを求める実益、期間や手続などを満たす必要があります。これらを欠くと、裁判所は本案を判断せず、訴えを却下します。