「行政指導には処分性がない」と説明されることが一般的です。もっとも、行政指導であっても、相手方の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する場合には、例外的に処分性が認められることがあります。
行政事件訴訟における「処分性」とは
処分性とは、行政庁の行為が取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するかという問題です。
判例上、行政庁の処分とは、国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているものをいいます。
処分性が認められるかどうかを考える際には、主に次の点がポイントとなります。
- 法律に基づく行為であること
- 国または公共団体が国民に対して行うこと
- 国民に直接向けられた行為であること
- 国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定すること
これらを満たさない行為は、原則として取消訴訟の対象となりません。行政庁の行為の名称だけでなく、実際にどのような法的効果が生じるのかを確認する必要があります。
行政指導に処分性はある?
原則として処分性は認められない
行政指導は、法的な拘束力がないため、原則として処分性を持ちません。それだけで国民の権利義務を直接形成したり、その範囲を確定させたりするものではないからです。
「勧告」「要請」といった名称だけで結論が決まるわけではなく、相手方の権利義務に直接影響を与えるかどうかが重要です。
例外的に処分性が認められる場合
行政指導は原則として処分性を有しませんが、例外的に処分性が認められる判例もあります。行政指導に当たる行為についても、法律に基づき、国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定するものといえる場合には、処分性が認められることがあります。
病院開設中止勧告の判例
最高裁判所は、改正前の医療法30条の7に基づき、都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行った病院開設中止の勧告について、処分性を認めました(最判平成17年7月15日)。
このように、行政指導に当たる行為であっても、処分性が認められる場合があります。行政指導であるという形式だけで、処分性が否定されるわけではありません。
まとめ
- 処分性とは、行政庁の行為が取消訴訟の対象となるかという問題です。
- 行政指導は法的拘束力がないため、原則として処分性が認められません。
- ただし、法律に基づき、国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する場合には、例外的に処分性が認められることがあります。
- 病院開設中止勧告について、最高裁は処分性を認めました。
