取消訴訟を起こすときに迷いやすいのが、「誰を被告にするのか」という問題です。この判断を定めるルールが、行政事件訴訟法11条の被告適格です。
結論からいうと、原則として、処分や裁決をした行政庁そのものではなく、その行政庁が所属する国または公共団体を被告にします。
被告適格とは?取消訴訟で被告にできる者を決めるルール
被告適格の意味
被告適格とは、取消訴訟で「誰を相手に訴えを起こすべきか」を決める行政事件訴訟法上のルールです。
行政庁ではなく行政主体を被告にするのが原則
平成16年の法改正前は、処分や裁決をした行政庁が被告とされていました。しかし現在は、原則として行政庁の所属する国または公共団体を被告にします。
取消訴訟の被告適格に関する原則|行政事件訴訟法11条1項
処分の取消しを求める場合
処分をした行政庁が所属する国または公共団体が被告です。
裁決の取消しを求める場合
裁決をした行政庁が所属する国または公共団体を被告にします。処分の取消訴訟と裁決の取消訴訟では対象が異なりますが、被告を決める基本的な考え方は同じです。
行政事件訴訟法11条の例外|原則どおりに被告を決められない場合
行政庁の権限が別の行政庁へ承継された場合
処分や裁決の後に、その行政庁の権限が別の行政庁へ引き継がれたときは、権限を承継した行政庁が所属する国または公共団体を被告にします。
行政庁が国または公共団体に所属しない場合
処分や裁決をした行政庁が国・公共団体に所属しないときは、その行政庁自体が被告となります。
被告とすべき者が存在しない場合
被告とすべき国、公共団体または行政庁が存在しない場合は、その処分や裁決に係る事務が帰属する国または公共団体を被告にします。
被告を間違えた場合の扱いと行政庁の訴訟上の権限
国または公共団体が被告となった場合、その被告は、処分や裁決をした行政庁を裁判所に明らかにしなければなりません(11条5項)。また、その行政庁は、国または公共団体を被告とする訴訟で、裁判上の一切の行為をする権限を有します(同条6項)。
なお、原告が故意または重大な過失なく被告を間違えた場合には、申立てにより、裁判所が被告の変更を許可できることがあります(15条1項)。ただし、誤りがあれば必ず変更できるわけではありません。
まとめ|取消訴訟では原則として行政庁の所属先を被告にする
- 被告適格とは、取消訴訟で誰を被告にするかを定めるルール
- 原則は、処分・裁決をした行政庁が所属する国または公共団体を被告にする
- 権限承継、行政庁が国または公共団体に所属しない場合、被告とすべき者が存在しない場合などには例外がある
- 被告を誤っても、故意または重大な過失がなければ変更できる場合がある
