1. 仮の義務付けとは
1-1. 行政庁に処分や裁決を仮に命じる制度
仮の義務付けとは、行政庁に対して、一定の処分や裁決をするよう仮に命じる制度です。義務付けの訴えにおいて、緊急の救済が必要な場合に利用されます。
行政事件訴訟法37条の5に定められており、裁判所が申立てにより、決定をもって行政庁が処分または裁決をすべき旨を仮に命じます。
1-2. 利用するには義務付けの訴えを提起している必要がある
仮の義務付けは、義務付けの訴えの提起があった場合に申し立てることができます。仮の義務付けだけを単独で申し立てることはできません。
義務付けの訴えには、法令に基づく申請または審査請求を前提とする「申請型」と、申請を前提としない「非申請型」があります。仮の義務付けは、これらの義務付けの訴えに関する仮の救済制度です。
2. 仮の義務付けが認められる3つの要件
仮の義務付けが認められるには、次の3つの要件を満たす必要があります。
2-1. 償うことのできない損害を避けるため、緊急の必要があること
その義務付けの訴えに係る処分または裁決がされないことにより、償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があることが必要です。
2-2. 本案について理由があるとみえること
本案について理由があるとみえることも必要です。ここでいう本案とは、提起された義務付けの訴えを指します。
2-3. 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと
公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないことも求められます。
したがって、緊急の必要があり、本案について理由があるとみえる場合でも、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、仮の義務付けは認められません。
3. 仮の義務付けの申立てと裁判所の判断
義務付けの訴えを提起したうえで、裁判所に仮の義務付けを申し立てます。裁判所は、申立てに対する決定をするにあたり、疎明に基づいて判断します。
上記の要件を満たす場合、裁判所は決定をもって、行政庁が処分または裁決をすべき旨を仮に命じることができます。
まとめ
- 仮の義務付けは、行政庁に処分や裁決を仮に命じる制度です。
- 利用するには、義務付けの訴えを提起している必要があります。
- 認められるには、①償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があること、②本案について理由があるとみえること、③公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと、の3要件を満たす必要があります。
