行政庁が処分や裁決をしようとしている場合、その実施を一時的に止めるよう裁判所に求める制度が「仮の差止め」です。差止めの訴えの判断を待っていると償うことのできない損害が生じるおそれがあるときに、緊急の救済を受けるために利用されます。
仮の差止めとは
行政庁に処分をしないよう命じる制度
仮の差止めとは、裁判所が決定により、行政庁に対して、一定の処分や裁決を仮にしてはならないと命じる制度です。処分がされる前に、暫定的な救済を求める点に特徴があります。
根拠となる規定は、行政事件訴訟法37条の5第2項および第3項です。
差止めの訴えとの関係
差止めの訴えは、行政庁が処分や裁決をしないよう求める本来の訴訟です。仮の差止めは、差止めの訴えの提起があった場合に申し立てることができ、差止めの訴えに係る処分や裁決がされることによる損害を避けるための仮の措置です。
仮の差止めが認められる3つの要件
裁判所に仮の差止めを認めてもらうには、次の要件をすべて満たす必要があります。
1.償うことのできない損害を避けるため、緊急の必要があること
処分や裁決がされることにより、償うことのできない損害が生じるおそれがあり、その損害を避けるために緊急の必要があることが必要です。
単に不利益を受ける可能性があるだけでは足りず、処分や裁決がされる前に差し止める必要があることが求められます。
2.本案について理由があるとみえること
本案である差止めの訴えについて、理由があるとみえることが必要です。最終的な勝訴が確定している必要まではありませんが、差止めを認める理由があると見込まれなければなりません。
3.公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと
仮の差止めによって、公共の福祉に重大な影響が生じるおそれがないことも必要です。これは、ほかの要件を満たしていても、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは認められないという消極的な要件です。
仮の差止めを申し立てるときのポイント
差止めの訴えを提起したうえで、裁判所に仮の差止めを申し立てます。仮の差止めは、差止めの訴えの提起があった場合に申し立てることができる制度です。
まとめ
仮の差止めとは、行政庁が処分や裁決をする前に、裁判所がその実施を仮に止める制度です。差止めの訴えの提起があった場合に申し立てることができ、認められるには次の3要件をすべて満たす必要があります。
- 償うことのできない損害を避けるため、緊急の必要があること
- 本案について理由があるとみえること
- 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこと
