通信の秘密とは、電話や郵便などによる通信を、第三者に知られないよう保障する権利です。憲法21条2項後段に定められており、通信の内容だけでなく、通信が行われた事実も保護の対象になります。
もっとも、通信の秘密はどのような場合でも制限できないという意味ではありません。法律の定める手続に従えば、犯罪捜査のための電話傍受が例外的に認められることがあります。
通信の秘密とは?憲法21条が保障する内容
通信の秘密の意味
通信とは、特定の相手に自分の意思を伝える行為です。そのため、表現行為の一種といえます。一方で、通常の表現行為とは異なり、特定の相手とのやり取りを他人に知られたくないというプライバシー保護の側面があります。
憲法21条2項後段は、このような通信の秘密を保障しています。公権力によって通信の内容や通信の存在自体が調査の対象とされないことが保障されます。また、通信業務に従事する者が、職務上知った通信に関する情報を漏らすことも許されません。
保障される2つの情報
- 通信の内容:電話で話した内容や、手紙に書かれた文章など
- 通信の存在自体:そもそも通信が行われたかどうかなど
通信の秘密は絶対に制限されないのか
通信の秘密は重要な権利ですが、法律に基づく一定の制限まで全面的に禁止されているわけではありません。たとえば、刑事訴訟法による郵便物の押収、関税法による郵便物等の差押え、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律による信書の検査が挙げられます。
ただし、電話傍受には、通信の秘密に関する要件に加え、法律の定める手続が必要です。電話傍受は通信内容を直接把握するため、通信の秘密だけでなくプライバシーも侵害する強制処分です。
電話傍受が許されるための要件
電話傍受の法的な位置づけ
電話傍受は、通信の秘密やプライバシーを侵害する強制処分です。捜査機関が自由に実施できるものではありません。しかし、次のような事情が認められ、法律の定める手続に従う場合には、憲法上まったく許されないわけではありません。
電話傍受が認められるための具体的な要件
- 重大な犯罪に係る被疑事件であること
- 被疑者が犯罪を行ったと疑うに足りる十分な理由があること
- その電話で、被疑事実に関連する通話が行われる蓋然性があること
- 電話傍受以外の方法では、その罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であること
- 電話傍受により侵害される利益の内容や程度を慎重に考慮しても、犯罪捜査上、電話傍受が真にやむを得ないこと
- 法律の定める手続に従って実施されること
これらの事情を踏まえ、電話傍受が憲法上許されるかが判断されます。
まとめ|通信の秘密と電話傍受の要件
通信の秘密は、憲法21条2項後段が保障する権利です。保護されるのは電話や手紙の内容だけでなく、通信の存在自体も含まれます。
電話傍受は、通信の秘密とプライバシーを侵害する強制処分です。そのため、重大な犯罪、十分な嫌疑、関連通話の蓋然性、他の方法による証拠収集の困難性などの事情を満たし、通信傍受による利益侵害を慎重に考慮した上で、法律の定める手続に従う場合に限って、例外的に許されます。
