代理権授与表示による表見代理とは?成立要件をわかりやすく解説

代理権授与表示による表見代理とは、本人が実際には代理権を与えていないにもかかわらず、第三者に対して、他人に代理権を与えた旨を表示した場合に成立し得る制度です。一定の要件を満たすと、本人は無権代理行為の効果を拒めず、契約上の責任を負います。

代理権授与表示による表見代理とは

本人が代理権を与えた旨を表示した場合の制度

表見代理は、実際には代理権がないにもかかわらず、代理権があるように見える事情を信頼した相手方を保護する仕組みです。代理権授与表示による表見代理は、民法109条1項に定められています。

たとえば、Aの代理人と名乗るBからA所有の土地を購入する際に、Cが念のためAに電話で問い合わせたところ、AがCに対し、Bに自己の土地を売却する代理権を与えた旨を回答したとします。しかし、実際にはAはBに土地売却の代理権を与えていませんでした。この場合、CがBに代理権がないことについて善意・無過失であれば、表見代理が成立する可能性があります。

この場合、Bの行為は本来、代理権のない者による無権代理です。しかし、A自身が権限があるように表示したため、要件を満たせば契約の効果がAに及びます。

成立すると本人が契約上の責任を負う

表見代理が成立すると、無権代理人の行為の効果が本人に帰属します。そのため、本人は「実際には代理権を与えていない」という理由だけで契約の履行を拒むことができません。

代理権授与表示による表見代理の成立要件

本人が第三者に代理権を与えた旨を表示していること

本人が、実際に契約をした相手方である第三者に対し、特定の者へ代理権を与えた旨を表示している必要があります。誰に、どのような代理権を与えたと表示したのかが重要です。

実際には代理権が授与されていないこと

代理権授与表示による表見代理は、本人が実際には代理権を与えていない場合に問題となります。現実に代理権が存在するなら、通常の有権代理であり、表見代理ではありません。

無権代理人の行為が表示された代理権の範囲内であること

無権代理人の行為は、本人が表示した代理権の範囲内でなければなりません。表示された範囲を超える行為については、109条1項だけでは本人に効果を帰属させられません。この場合、相手方に代理権の存在を信ずべき正当な理由があれば、109条2項による処理が問題となります。

相手方が代理権の不存在について善意・無過失であること

相手方が代理権のないことを知らず、かつ、知らなかったことについて過失がないことが必要です。代理権がないと知っていた場合や、過失によって知らなかった場合は、表見代理による保護を受けられません。

表見代理が成立した場合の効果と注意点

本人は無権代理行為の効果を否定できない

要件を満たすと、無権代理人の行為の効果が本人に帰属します。その結果、本人は相手方に対して契約を履行する責任を負います。

表示された代理権の範囲を超えた場合

本人の表示した範囲を超える行為でも、相手方に代理権限を信じる正当な理由があるときは、109条2項により、代理権授与表示による表見代理と権限外の行為の表見代理が組み合わされることがあります。ただし、代理権授与の表示があれば、常に範囲外の行為まで本人に帰属するわけではありません。

法定代理には適用されない

民法109条は、本人が自ら他人に代理権を与えた旨を表示した場合を対象とします。法律の規定によって当然に代理権が生じる法定代理には、代理権授与表示による表見代理は適用されません。

まとめ

代理権授与表示による表見代理は、本人が実際には代理権を与えていないのに、第三者へ代理権を与えた旨を表示した場合の制度です。主な成立要件は、次の4つです。

  1. 本人が代理権授与を表示したこと
  2. 実際には代理権がないこと
  3. 行為が表示された代理権の範囲内であること
  4. 相手方が代理権の不存在について善意・無過失であること

成立すると、無権代理行為の効果が本人に及び、本人が契約上の責任を負います。ただし、表示の範囲を超えた行為や法定代理については、別のルールに注意が必要です。