「解除」と「取消し」は、どちらも契約関係に影響を及ぼす制度です。しかし、解除はいったん有効に成立した契約を解消するものであるのに対し、取消しは法律上の取消原因がある契約の効力を否定するものです。ここでは、両者の違いと、契約後に受け取ったものを返す原状回復義務について説明します。
契約の解除とは
契約の解除とは、いったん有効に成立した契約について、法定原因または当事者の合意などにより、その債権・債務関係を契約成立前の状況(原状)に回復させることです。
解除の効果は、原則として契約成立時にさかのぼります。たとえば、売買契約が解除された場合、売主は受け取った代金を買主に返し、買主は受け取った商品や目的物を売主に返します。
ただし、すべての解除が契約時にさかのぼるわけではありません。アパート賃貸借契約の解除のように、将来に向かってのみ契約を終了させるものもあります。
契約の解除と取消しの違い
取消しとは
取消しとは、法律で定められた取消原因がある契約について、法律上認められた者が契約の効力を否定することです。取消しの対象となる主な契約には、次のようなものがあります。
- 制限行為能力者が単独で行った契約
- 錯誤による契約
- 詐欺による契約
- 強迫による契約
取消しができるのは、制限行為能力者本人や、同意をすることができる者、錯誤・詐欺・強迫による契約の表意者など、法律で定められた取消権者に限られます。
| 項目 | 解除 | 取消し |
|---|---|---|
| 対象 | 有効に成立した契約 | 取消原因のある契約 |
| 主な原因 | 法定原因や当事者の合意など | 制限行為能力、錯誤、詐欺、強迫など |
| できる人 | 契約上または法律上、解除できる者 | 法律上の取消権者 |
| 効果 | 原則として契約時にさかのぼって原状回復 | 契約時にさかのぼって無効 |
つまり、解除は「有効だった契約を後から解消する制度」、取消しは「一定の問題がある契約の効力を否定する制度」です。
解除・取消しによる原状回復義務とは
原状回復義務とは、契約によって受け取った金銭や物を相手に返し、契約成立前の状態に戻すための義務です。解除の場合も取消しの場合も、原則として当事者双方が返還義務を負います。
- 代金を受け取った側:受け取った代金を返す
- 商品や目的物を受け取った側:受け取った商品や目的物を返す
もっとも、賃貸借契約の解除のように将来に向かってのみ効力を失う場合は、契約開始時からすべてをなかったことにするものではありません。
解除・取消しと第三者との関係
取消し前に第三者が現れた場合
売買契約の目的物が第三者に転売されていた場合、取消しの理由によって、取消しを第三者に対抗できるかが異なります。
- 制限行為能力や強迫を理由とする取消し:善意・悪意や過失の有無を問わず、第三者に対抗できます。不動産では、第三者が登記を備えていても対抗できます。
- 錯誤や詐欺を理由とする取消し:善意・無過失の第三者には対抗できません。この場合、第三者が不動産の登記を備えている必要はありません。
錯誤や詐欺を理由とする取消しは、善意・無過失の第三者がいる場合でも可能ですが、取消しを第三者に対抗できないことがあります。
取消し後に第三者が現れた場合
取消し後に元の相手方が目的物を第三者に譲渡した場合、取消しをした者は、登記がなければ、その第三者に対抗できません。取消しによって、元の相手方から取消しをした者と第三者への二重譲渡があったのと同じように扱われ、先に登記を備えた者が所有権を取得します。
解除前に第三者が現れた場合
不動産の売買契約を解除する前に買主が目的物を第三者へ転売していた場合、解除した売主は、登記を備えた第三者に対して目的物の返還を請求できません。解除前の第三者が保護を受けるには、登記などの対抗要件を備えている必要があります。
解除後に第三者が現れた場合
解除後に元の買主が目的物を第三者に譲渡した場合、解除した売主は、登記がなければ、その第三者に対抗できません。この場合も、元の買主から売主と第三者への二重譲渡があったのと同じように扱われ、先に登記を備えた者が所有権を取得します。
まとめ
- 解除とは、有効に成立した契約を法定原因や当事者の合意などで解消することです。
- 取消しとは、制限行為能力、錯誤、詐欺、強迫などの原因がある契約の効力を否定することです。
- 解除も取消しも、原則として原状回復義務が生じます。
- ただし、賃貸借契約の解除のように、将来に向かってのみ契約を終了させる場合があります。
- 目的物が第三者に譲渡されている場合、解除・取消しの前後や理由によって、第三者に対抗できるかどうかが異なります。
