質権の実行とは、債務不履行があった場合に、質権の目的物から優先的に弁済を受ける手続です。実行方法は、質物が動産・不動産・債権のどれであるかによって異なります。
- 動産質・不動産質:原則として競売
- 動産質:簡易な弁済充当
- 債権質:第三債務者からの直接取立て
なお、債務不履行があったからといって、質権者が質物を自由に自分のものにできるわけではありません。法律が定める方法に従って実行する必要があります。
動産質・不動産質は原則として競売で実行する
動産質や不動産質では、原則として、裁判所等による競売によって質物を換価し、その代金の配当を受けます。基本的な流れは次のとおりです。
- 債務者に債務不履行が発生する
- 質権者が質物の競売を申し立てる
- 質物が売却され、代金に換えられる
- 売却代金の配当を受ける
このように、動産質・不動産質の基本的な実行方法は、質物を換価して配当を受ける競売です。
動産質では簡易な弁済充当が認められる
動産質では、競売によらず、簡易な弁済充当によって実行できます。これは、裁判所が選任した鑑定人に質物を評価してもらい、その評価額と債権額との差額を質権設定者に支払ったうえで、質権者が質物の所有権を取得する方法です。
たとえば、質物の評価額が債権額を上回る場合、質権者はその超過分を設定者に清算しなければなりません。単に質物を取得すればよいのではなく、評価に基づく差額の支払いが必要です。
債権質は第三債務者から直接取り立てる
債権質では、質権者が質権の目的となっている債権を、第三債務者に対して直接取り立てることができます。第三債務者とは、質権設定者に対して支払義務を負っている者です。
第三債務者から債権を取り立てる点が、債権質の特徴です。動産質のように目的物を競売するのではなく、目的となっている債権そのものを回収します。
流質契約は禁止される
質権設定契約や弁済期前の契約で、債務不履行があれば質権者が質物の所有権を取得する、または法律に定められた方法によらず処分する、とあらかじめ約束することはできません。これを流質契約の禁止といいます。
ただし、弁済期を過ぎた後に、設定者が代物弁済として質物の所有権を質権者に移すことまで禁止されるわけではありません。弁済期前の取得合意と、弁済期後の代物弁済は区別する必要があります。
まとめ
- 動産質・不動産質は、原則として競売で実行する
- 動産質では、鑑定人の評価と差額清算を前提に簡易な弁済充当ができる
- 債権質では、第三債務者から債権を直接取り立てる
- 弁済期前に質物を自由に取得する流質契約は認められない
