債務者が第三者に対する権利を行使していないと、債権者はお金を回収できないおそれがあります。このような場合に、債権者が債務者に代わって権利を行使する制度が債権者代位権です。
ただし、どのような場合でも利用できるわけではありません。原則として、次の5つの要件を満たす必要があります。
債権者代位権とは
債権者が債務者に対して持つ債権を保全するため、債務者が第三者に対して持つ権利を、債務者に代わって行使する制度です。
例えば、AがBに対して100万円の貸金債権を持ち、BがCに対して50万円の売掛代金債権を持っているとします。Bにそれ以外の財産がなく、Cに対する債権の弁済期が到来しているにもかかわらず、Bが権利を行使しない場合、Aは一定の条件のもとで、Bに代わってCに対する債権を行使できます。
この場合、Aが債権者、Bが債務者、Cが第三債務者です。債権者は債務者の代理人ではなく、自分の名義で権利を行使します。
債権者代位権を行使するための5つの要件
1.債務者が無資力であること
原則として、債務者の財産だけでは債務を十分に支払えず、債権者が完全な弁済を受けられない状態であることが必要です。これを債務者の無資力といいます。
ただし、特定の権利を実現するために制度を利用する「債権者代位権の転用」では、無資力が不要となる場合があります。
2.債務者が被代位権利を行使していないこと
債務者がすでに自分で第三者に権利を行使している場合、債権者が代位行使することはできません。債務者が権利を行使していないことが必要です。
3.一身専属権・差押えを禁止された権利ではないこと
被代位権利は、原則として一身専属権や差押えを禁止された債権・権利であってはなりません。
一身専属権とは、行使するかどうかを債務者の意思に委ねるべき権利です。離婚請求権や親権などが該当します。一方、取消権・相殺権・解除権は一身専属権ではないため、代位行使の対象となり得ます。
なお、慰謝料請求権は原則として対象外ですが、当事者の合意や債務名義によって具体的な金額が確定している場合は、対象となることがあります。遺留分侵害額請求権も原則として対象外で、権利行使の意思を外部に明確に示した特段の事情がある場合を除き、代位行使できません。
4.債権者の債権の弁済期が到来していること
債権者が債務者に対して持つ債権について、弁済期が到来していなければなりません。
ただし、保存行為を行う場合には、弁済期がまだ来ていなくても代位行使できる場合があります。
5.債権者の債権が強制執行によって実現できること
債権者の債権は、法律上、強制執行によって実現できるものでなければなりません。強制執行によって実現できない権利を保全するために、債権者代位権を利用することはできません。
まとめ
債権者代位権の要件は、①債務者の無資力、②被代位権利の不行使、③一身専属権・差押えを禁止された権利でないこと、④債権者の債権の弁済期到来、⑤強制執行による実現可能性の5つです。もっとも、転用や保存行為などの例外もあるため、具体的なケースでは権利の内容を確認する必要があります。
