詐害行為取消権とは?制度の意味と具体例をわかりやすく解説

詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することを知りながら一般財産を減少させる行為をした場合に、その行為を取り消し、財産を保全・回復する制度です。一定の要件を満たせば、債権者は財産の返還や価額の償還を請求できます。

詐害行為取消権とは

債務者の財産を回復して債権を保全する制度

たとえば、AがBに対して500万円の貸金債権を有している場合に、BがAを害することを知りながら、唯一の財産である不動産をCに贈与したとします。このような場合、一定の要件を満たせば、Aは贈与の取消しを求めることができます。

ただし、財産を処分しただけで当然に認められるわけではありません。詐害行為取消権は、債権者が債務者に代わって請求する制度ではなく、債権者が自分の名で裁判所に請求します。

詐害行為取消権が認められる要件

債務者の行為に関する要件

  • 財産権を目的とする行為であること
  • 行為によって一般財産が減少し、総債権者が完全な弁済を受けられない状態(無資力)になったこと
  • 債務者が、債権者を害することを知って行為をしたこと

債権者を害することを意図したり、欲したりすることまで必要ではなく、債権者を害する事実を認識していれば足ります。この認識は、債権者が立証する必要があります。

身分行為は原則として対象外です。ただし、離婚に伴う財産分与が不相当に過大で、財産分与に仮託された財産処分と認められる特段の事情がある場合などには、対象となることがあります。

債権者の債権に関する要件

債権者は、原則として金銭債権を有していなければなりません。また、被保全債権は、詐害行為の前の原因に基づいて発生したものである必要があります。行為後に債権が発生しても、その発生原因が行為前にあれば対象となり得ます。さらに、強制執行によって実現できる債権であることも必要です。

特定物の引渡請求権でも、最終的に損害賠償請求権となり得る場合には、例外的に詐害行為取消権の行使が認められることがあります。

受益者・転得者に関する要件

受益者は債務者から財産を受け取った者、転得者は受益者からさらに財産を取得した者です。受益者は、行為の当時、債権者を害すべき事実について悪意でなければなりません。転得者に請求する場合は、受益者と転得者の双方が、行為または転得の当時に悪意である必要があります。さらに譲渡が続いた場合は、受益者から再転得者まで関係する者全員の悪意が必要です。受益者が善意であることは受益者が、転得者の悪意は債権者が立証します。

特別なルール

債務者が相当の対価を得て財産を処分した場合は、原則として詐害行為とはなりません。ただし、取得した対価を隠匿・無償供与するおそれを現に生じさせ、債務者がその意思を有し、受益者もその意思を知っていた場合は、取消しの対象となり得ます。

既存の債務について担保を供与したり、債務を消滅させたりする行為も、原則として詐害行為とはいえません。ただし、債務者が支払不能の時に行い、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもっていた場合は、取消しの対象となり得ます。

また、債務者の義務に属しない担保の供与などについては、支払不能になる前30日以内に行われ、債務者と受益者が通謀して他の債権者を害する意図をもっていた場合に、取消しの対象となり得ます。過大な代物弁済などでは、消滅した債務の額を超える部分が取消しの対象となることがあります。

詐害行為取消権の行使方法・効果・期間

必ず裁判所に請求する

詐害行為取消権は裁判外では行使できません。請求の相手方は、受益者または転得者であり、債務者ではありません。債権者は、行為の取消しとともに財産の返還を求めることができ、返還が困難な場合は価額の償還を請求できます。

詐害行為取消請求に係る訴えを提起したときは、債権者は遅滞なく債務者に訴訟告知をしなければなりません。

目的物が可分である場合、原則として取消しの範囲は自分の債権額が上限です。目的物が不可分である場合には、債権額を超えて全部の取消しができることがあります。

金銭の支払いや動産の引渡しを求める場合、債権者は受益者または転得者に対し、自己に直接支払いや引渡しをするよう求めることができます。ただし、詐害行為取消権によって優先弁済権を取得するわけではありません。

詐害行為取消請求を認容する確定判決の効力は、債務者とそのすべての債権者に及びます。

訴えは、債権者が債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを知った時から2年、または行為の時から10年を過ぎると提起できません。