詐害行為取消権は、債務者が債権者を害することを知って財産を処分した場合に、その行為を取り消して一般財産を回復する制度です。ただし、債務者の認識だけで、直ちに取消しが認められるわけではありません。財産を受け取った受益者や、その後に取得した転得者の認識も問題になります。
詐害行為取消権における受益者・転得者・悪意とは
受益者と転得者
受益者とは、債務者から財産の譲渡などを直接受けた人です。受益者からさらに財産を取得した人は転得者といい、その転得者から取得した人は再転得者に当たります。
ここでいう悪意は、道徳的に悪いという意味ではありません。債務者の行為または転得によって債権者を害する事実を知っていたことを指します。
なぜ受益者や転得者の悪意が必要なのか
詐害行為取消権が認められるためには、受益者および転得者が、その行為または転得の当時、債権者を害すべき事実について悪意であることが必要です。
転得者に対して取消しを求める場合は、原則として受益者と転得者の双方が悪意でなければなりません。再転得者がいる場合も、受益者、転得者、再転得者の全員が悪意である必要があります。
例えば、債務者が唯一の建物を受益者に贈与し、その後、受益者がその建物を転得者に売却した場合、債権者が転得者に対して詐害行為取消請求をするためには、受益者と転得者の双方が、取得時に債権者を害すべき事実について悪意でなければなりません。
受益者・転得者の悪意は誰が立証するのか
債務者の詐害意思は債権者が立証する
債権者は、債務者が債権者を害することを知って行為をしたことを立証しなければなりません。また、その行為によって一般財産が減少し、総債権者が完全な弁済を受けることができない状態となったことも必要です。債務者が債権者を害することを意図し、または欲していたことまで必要とされるわけではありません。
受益者と転得者の立証責任
受益者が善意であることの立証責任は、受益者が負います。一方、転得者が悪意であることの立証責任は、取消しを求める債権者が負います。
つまり、転得者に対する請求では、受益者が悪意であったことに加え、転得者自身が取得時に債権者を害すべき事実を知っていたことも、債権者が立証する必要があります。
