詐害行為取消権を使えば、一定の条件のもとで、受益者や転得者から財産を債権者自身に直接返還させることができます。受益者に対しては金銭の支払いや動産の引渡しを、転得者に対しては動産の引渡しを債権者へ直接するよう請求できます。ただし、詐害行為取消権の要件を満たしたうえで、裁判所に請求する必要があります。
詐害行為取消権で財産の返還を直接請求できる
受益者に対する金銭の支払い・動産の引渡し
債務者の行為によって財産を取得した人を受益者といいます。詐害行為の取消しが認められる場合、債権者は受益者に対し、返還すべき金銭を自分に支払うよう求められます。動産についても、債務者ではなく債権者へ直接引き渡すよう請求できます。
転得者に対する動産の引渡し
受益者からさらに財産を取得した転得者が動産を保有している場合、債権者はその転得者に対して、自分への直接の引渡しを請求できます。ただし、転得者に対する請求では、受益者と転得者の双方が、債権者を害すべき事実を知っていたことが必要です。
価額償還も債権者への直接請求が可能
受益者または転得者が財産を返還することが困難なときは、財産の価額を金銭で支払う価額償還を求められます。この場合も、債権者は、その金銭の支払いを自分に対してするよう請求できます。
直接の支払い・引渡しを請求するための条件
詐害行為取消権の基本的な要件
主に次の要件が必要です。
- 債務者が財産権を目的とする行為をしたこと
- その行為で一般財産が減少し、債権者が十分な弁済を受けられない状態(無資力)になったこと
- 債務者が債権者を害することを知っていたこと
- 原則として、詐害行為より前の原因に基づく金銭債権があり、強制執行で実現できること
- 受益者や転得者が、債権者を害すべき事実を知っていたこと
裁判所への請求が必要
詐害行為取消権は、通知だけで一方的に行使することはできません。受益者または転得者を相手方として、取消しと財産の返還または価額償還を裁判上請求します。債務者は相手方(被告)とはされませんが、訴えを提起した債権者は、遅滞なく債務者へ訴訟告知をする必要があります。
直接請求できる範囲と支払い後の効果
請求できる金額・財産の範囲
可分な財産については、原則として債権者自身の債権額が上限です。価額償還も同様です。もっとも、目的物が不可分の場合には、債権額を超えて全部の取消しが認められることがあります。
支払い・引渡し後は債務者への返還が不要
受益者または転得者が、債権者に対して法に基づく支払いや引渡しをした場合、債務者に対して同じ支払いや引渡しを改めてする必要はありません。
直接受け取れても優先弁済権ではない
直接支払いを受けられることは、法律上の優先弁済権を得ることとは別です。ただし、受け取った金銭と債務者への引渡債務を相殺することで、事実上、優先弁済を受けることができます。
まとめ
詐害行為取消権では、要件を満たして裁判で請求すれば、受益者に金銭の支払いを債権者へ直接行わせたり、受益者や転得者に動産を債権者へ直接引き渡させたりできます。現物返還が難しい場合は価額償還も可能です。ただし、請求範囲は原則として債権額が限度であり、直接受領できることが優先弁済権を意味するわけではありません。
