保証人は、通常、主たる債務者に代わって債権者へ弁済した後、その支出した金額などを主たる債務者に請求します。もっとも、一定の条件を満たす場合は、まだ弁済していなくても主たる債務者に対応を求めることができます。これが事前求償権です。
保証人の事前求償権とは
弁済前に主たる債務者へ求償できる権利
事前求償権とは、保証人が債権者へ弁済する前に、主たる債務者に対して求償できる権利です。民法460条が定めており、将来、保証人が負担する可能性のある弁済について、あらかじめ主たる債務者に必要な対応を求めるための制度です。
事前求償権を持つのは委託を受けた保証人
事前求償権が認められるのは、主たる債務者から頼まれて保証人になった場合です。主たる債務者の委託を受けていない保証人には、民法460条の事前求償権は認められません。
なお、保証人が実際に弁済などをして主たる債務を消滅させた後に問題となるのは、通常の求償権です。事前求償権とは、弁済の前に行使する点が異なります。
保証人が事前求償権を行使できる3つの場合
主たる債務者が破産し、債権者が配当に加入しない場合
主たる債務者について破産手続開始の決定がされ、さらに債権者が破産財団の配当に加入しないときは、事前求償権を行使できます。保証人が将来弁済する可能性のある負担について、あらかじめ主たる債務者に求める場面です。
主たる債務の弁済期が到来した場合
主たる債務の弁済期が到来していれば、保証人は、まだ債権者に支払っていなくても事前求償権を行使できます。
ただし、保証契約を結んだ後に債権者が主たる債務者へ与えた期限は、保証人に対抗できません。したがって、保証契約後に債権者と主たる債務者が返済期限を延長しても、その延長を理由として保証人への事前求償を妨げることはできません。
保証人が過失なく弁済すべき旨の裁判の言渡しを受けた場合
保証人が、過失なく、債権者へ弁済すべき旨の裁判の言渡しを受けた場合も、弁済前に事前求償権を行使できます。
事前求償権と、弁済後の求償権との違い
事前求償権は、保証人が債権者へ弁済する前に行使する権利です。一方、保証人が自分の財産で弁済などをして主たる債務を消滅させた後は、そのために支出した財産額などを主たる債務者へ求償できます。
また、委託を受けた保証人が主たる債務の弁済期より前に弁済した場合、主たる債務者がその時点で利益を受けた限度で求償できます。ただし、この求償権は、主たる債務の弁済期が到来するまでは行使できません。
主たる債務者の委託を受けていない保証人には事前求償権がない
主たる債務者に頼まれず保証人になった人には、民法460条の事前求償権はありません。弁済した場合の求償の範囲も、主たる債務者の意思や、その時点で受けている利益によって制限されます。
したがって、弁済前に主たる債務者へ請求できるかを確認するときは、まず主たる債務者から保証の委託を受けていたかを確認することが重要です。
まとめ
- 事前求償権は、保証人が債権者へ弁済する前に主たる債務者へ求償する権利
- 主たる債務者の委託を受けた保証人に認められる
- 主たる債務者の破産手続開始決定後に債権者が破産財団の配当に加入しない場合、主たる債務の弁済期が到来した場合、過失なく弁済すべき旨の裁判の言渡しを受けた場合に行使できる
- 委託を受けていない保証人には事前求償権がない
