自分が相手に対して持っていた債権が時効で消滅した場合でも、相手の債権と相殺できることがあります。ポイントは、その債権が時効で消滅する前に、相殺適状になっていたかです。
時効消滅した債権でも相殺できる場合がある
時効消滅前に相殺適状にあれば相殺できる
民法508条は、時効で消滅した債権であっても、消滅する前に相手方の債権と相殺適状になっていた場合には、その債権を自働債権として相殺できると定めています。相殺適状とは、相殺の要件を満たしている状態をいいます。
たとえば、AがBに対して100万円の金銭債権を持ち、BもAに対して50万円の金銭債権を持っていたとします。両方の債務が弁済期にあるなど、相殺適状になった後にAの債権が時効消滅した場合でも、Aは50万円の範囲で相殺できます。
一方、時効消滅した後に初めて相殺適状になった場合は、この例外には当たりません。
相殺が認められる基本的な要件
相殺とは、互いに同種の目的を有する債務を負う当事者が、一方的な意思表示によって、対当額の範囲で双方の債務を消滅させる制度です。相殺する側の債権を「自働債権」、相殺される側の債権を「受働債権」と呼びます。
相殺適状となるための要件
- 当事者が互いに債務を負っていること
- 双方の債務が同種の目的を有すること
- 原則として、双方の債務が弁済期にあること
ただし、自働債権の弁済期が到来していれば、受働債権の期限が到来していなくても、相殺する側が自ら期限の利益を放棄して相殺できる場合があります。
相殺は一方的な意思表示で行う
相殺は、相手方に対する一方的な意思表示で行えます。ただし、相殺の意思表示に条件や期限を付けることはできません。相殺できるのは、双方の債権のうち金額が少ない方(対当額)の範囲です。
時効消滅した債権を相殺する際の注意点
確認すべきなのは「時効消滅前」の相殺適状
債権の発生時期、弁済期、時効が完成した時期を確認し、時効消滅前に相殺適状となっていたかを確認する必要があります。
受働債権も時効消滅している場合
受働債権について消滅時効が完成している場合は、受働債権の債務者が時効の利益を放棄することにより、相殺できます。自働債権だけが時効消滅したケースとは分けて考えましょう。
まとめ:時効消滅前に相殺適状だったかが重要
時効消滅した債権でも、時効消滅前に相手方の債権と相殺適状になっていた場合は、相殺できます。相互に債務を負っていること、債務の同種性、弁済期などの要件を確認し、時期関係を整理することが重要です。
