税務署長の所得税更正が違法になるのはどんな場合?国家賠償責任の要件を解説

税務署長が行った所得税の更正によって、所得金額が実際より多く認定されることがあります。しかし、後になって認定の誤りが明らかになったとしても、それだけで直ちに国家賠償法上の違法行為となるわけではありません。

所得税の更正が国家賠償法上違法となるのは、税務署長が資料を収集し、課税要件事実を認定・判断するにあたり、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさないまま、漫然と更正したと認められるような事情がある場合です。

国家賠償法上、所得税の更正が違法になるための基本要件

税務署長による所得税の更正は、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に当たります。国に損害賠償責任が認められるには、一般に次の要件が必要です。

  • 国の公権力の行使であること
  • 公務員が職務を行うについて行ったこと
  • 公務員に故意または過失があること
  • 職務上の行為が違法であること
  • その行為によって損害が発生したこと

損害賠償義務を負うのは原則として国

国家賠償を請求する場合、原則として責任を負うのは税務署長個人ではなく国です。公務員に故意または重大な過失があったときは、国又は公共団体がその公務員に対して求償権を有しますが、被害者との関係では、国の賠償責任が問題となります。

所得税の更正が違法と評価される基準

所得金額を過大に認定しただけでは直ちに違法ではない

最高裁判所は、所得金額を過大に認定した更正であっても、その結果だけから国家賠償法上違法になるわけではないと判断しています。税務署長は、資料を収集し、これに基づいて課税要件事実を認定・判断するためです。

通常の注意義務を怠り、漫然と更正した場合

違法となる可能性があるのは、資料を収集し、課税要件事実を認定・判断するにあたり、税務署長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、漫然と更正したと認められる場合です。

国家賠償責任が認められるために必要なこと

国家賠償を請求するには、更正が誤っていたことだけでなく、故意または過失による違法性、納税者に生じた損害、そして更正と損害との関係を示す必要があります。

  1. 所得税の更正が公権力の行使であること
  2. 税務署長が職務上行ったこと
  3. 故意または過失があること
  4. 職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったこと
  5. その結果、更正が国家賠償法上違法となったこと
  6. 納税者に損害が発生したこと

所得税更正について国家賠償を検討する際の注意点

更正の違法性と、国家賠償法1条1項にいう違法性は同じではありません。最終的な所得金額が過大だったという結果だけでなく、税務署長が資料を収集し、課税要件事実を認定・判断する際に、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、漫然と更正したといえるかが重要です。また、違法な更正によって損害が生じたことも必要です。

まとめ

税務署長の所得税更正は、所得金額の認定が誤っていたというだけでは、直ちに国家賠償法上違法にはなりません。税務署長が資料を収集し、課税要件事実を認定・判断するにあたり、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、漫然と更正したと認められるような事情がある場合に、違法性が問題となります。さらに、故意または過失、損害も必要です。