道路管理の瑕疵と財政的制約とは?道路の安全対策と国家賠償責任を解説

道路の陥没や障害物などが原因で事故が起きた場合、道路管理者に国家賠償責任が認められることがあります。もっとも、予算不足を理由に責任を免れられるかは、道路の危険性や必要な対策などを踏まえて判断されます。

道路管理の瑕疵があると国家賠償責任を負う

国家賠償法2条1項の基本

国家賠償法2条1項は、道路などの公の営造物について、設置または管理に瑕疵があり、そのため他人に損害が生じたとき、国や公共団体が賠償責任を負うと定めています。

道路事故では、主に次の点が問題になります。

  • 道路が公の営造物に当たること
  • 道路の設置または管理に瑕疵があること
  • その瑕疵によって損害が発生したこと

また、損害の原因について責任を負うべき者が別にいる場合、国や公共団体はその者に対して求償権を有します(国家賠償法2条2項)。

道路管理の瑕疵は通常有すべき安全性の欠如

瑕疵とは、道路が通常備えているべき安全性を欠いている状態です。道路管理者に過失があったかどうかは、原則として必要とされません。道路の構造、利用状況、場所の環境などを総合して、個別具体的に判断します。

また、法律上の管理権を持つ場合だけでなく、事実上の管理をしている場合も、設置または管理の瑕疵の判断対象となります。

道路管理者に求められる安全対策

道路管理者には、道路を良好な状態に保ち、交通への支障を防ぐことが求められます。危険が生じた場合には、障害物の撤去、注意標識やバリケードの設置、通行規制、巡視や応急措置などが問題になります。

道路管理の瑕疵は安全対策を講じる時間があったかで変わる

危険を知ってから対応する時間的余裕があった場合

危険を発見・把握していたか、事故までに危険を除去したり通行者へ知らせたりする時間があったかが重要です。障害物を長時間放置し、適切な巡視体制も取っていなかった場合には、瑕疵が認められる可能性が高まります。

実際に、道路中央付近に故障した大型貨物自動車が87時間放置されていたにもかかわらず、巡視やバリケードの設置、通行止めなどの措置が取られていなかった事案では、道路管理の瑕疵が認められました。

事故直前に危険が発生し対応できなかった場合

一方、第三者の行為などにより事故直前に危険が生じ、管理者が対応する時間的余裕を持てなかった場合は、危険な状態が存在しただけで直ちに瑕疵となるわけではありません。危険が発生した時点と、管理者が必要な措置を取れた時点を分けて判断する必要があります。

財政的制約は道路管理の瑕疵の判断にどう影響するか

予算不足だけを理由に責任を免れることはできない

道路は行政機関が主体的に設置したものです。そのため、予算が足りなかったという事情だけで国家賠償責任を免れることはできません。道路の設置または管理に瑕疵があるかどうかは、道路が通常有すべき安全性を備えていたかを基準に判断されます。

多額の費用を要する対策を取らなかった場合

ただし、対策を講ずるために多額の費用を要する場合には、その対策が取られていないことだけで、道路の設置または管理に瑕疵があったとはいえないことがあります。

例えば、高速道路への小動物の侵入を防ぐため、金網の柵を地面との透き間なく設置し、地面にコンクリートを敷く対策について、事故の危険性が高くなく、その対策が全国で広く採られておらず、多額の費用を要し、動物注意の標識も設置されていた事案では、その対策が講じられていなかったとしても瑕疵は認められませんでした。

道路と河川では財政的制約の扱いが異なる

河川は自然公物であり、河川管理の瑕疵の判断では、財政的・技術的・社会的制約が考慮されることがあります。これに対し、道路は行政機関が主体的に設置する施設であるため、単なる予算不足を理由に責任を回避することはできません。ただし、道路でも、対策に多額の費用を要する場合など、具体的事情に応じて瑕疵の有無が判断されます。