地方自治法における「住民」とは、日常会話で使う意味よりも広い概念です。原則として、地方公共団体の区域内に住所がある人や法人を指します。年齢、行為能力、国籍の有無は、住民に該当するかどうかに直ちには影響しません。
地方自治法における「住民」とは
地方公共団体の区域内に住所がある人・法人
地方自治法10条1項の住民とは、当該地方公共団体に住所を有する者です。自然人だけでなく、法人も含まれます。外国人や未成年者、判断能力に制限がある人であっても、住所があれば原則として住民です。
住所は、自然人については生活の本拠、会社については本店の所在地を基準に考えます。
住民としての地位は市町村が記録・管理する
市町村は、住民基本台帳法に基づき、住民たる地位に関する正確な記録を整備することとされています。
住民に認められる主な権利
行政サービスを平等に受ける権利
住民は、法律の定めに従い、所属する普通地方公共団体の役務、つまり行政サービスを等しく受ける権利を有します。外国人や未成年者であっても、住所を有する住民である限り、この権利の対象です。
地方公共団体の政治に参加する権利
日本国民である住民には、地方議会議員や地方公共団体の長を選挙する権利と、選挙される権利が認められます。
- 選挙権:日本国民で満18歳以上であり、引き続き3か月以上、市町村の区域内に住所があること
- 地方議会議員の被選挙権:日本国民で満25歳以上であること
- 市町村長の被選挙権:日本国民で満25歳以上であること
- 都道府県知事の被選挙権:日本国民で満30歳以上であること
したがって、外国人も地方自治法上の住民ではありますが、同法上の選挙権・被選挙権は認められていません。
自治体の運営に関与するための請求権
地方自治法には、選挙権を持つ住民が一定数の署名を集めて自治体に請求する直接請求制度があります。主なものは、条例の制定・改廃請求、事務監査請求、議会の解散請求、議員・長・主要公務員の解職請求です。
請求ごとに、必要な署名数、請求先、議会の議決や住民投票の要否が異なります。なお、条例の制定・改廃請求では、地方税、分担金、使用料、手数料の徴収に関する条例は対象外です。
違法・不当な財務会計行為について監査を求める権利
普通地方公共団体の住民は、住民監査請求を行えます。選挙権があることは要件ではありません。違法・不当な公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行、債務その他の義務の負担、または公金の賦課・徴収や財産の管理を怠る事実などが対象です。
違法・不当な行為については、正当な理由がある場合を除き、行為の日または終了した日から1年を経過すると請求できません。ただし、公金の賦課・徴収や財産の管理を怠る事実については、この期間制限はありません。
住民が負う義務とは
地方公共団体の経費を分担する義務
住民は、法律の定めるところにより、地方公共団体の負担を分担する義務を負います。代表例は地方税です。
地方自治法上の「住民」を理解するポイント
地方自治法の住民に該当する基本的な基準は、地方公共団体の区域内に住所があることです。年齢、行為能力、国籍は、住民該当性そのものには原則として影響しません。
一方、選挙権・被選挙権・直接請求権には、日本国民であること、年齢、一定期間の住所、署名数などの別の条件があります。つまり、行政サービスを受ける住民としての地位と、政治参加の資格は同じではありません。
