出生届の嫡出子記載と法の下の平等をめぐる判例を解説

出生届には、子が「嫡出子」か「嫡出でない子」かを記載することが求められていました。この記載をしなかったため出生届が受理されず、子の戸籍や住民票に記載されなかった事案で、記載を求める戸籍法の規定が憲法14条1項に違反するかが争われました。

最高裁判所は、出生届にこの区別を記載させる規定そのものは、嫡出でない子に対する不合理な差別ではなく、憲法14条1項に違反しないと判断しました。

法の下の平等と「嫡出子・嫡出でない子」の区別

法の下の平等は不合理な差別を禁止する

憲法14条1項は、法律を適用する場面だけでなく、法律の内容についても平等であることを求めています。ただし、すべての区別が禁止されるわけではありません。事柄の性質に応じた合理的な区別は認められます。

したがって、問題は区別があるかどうかだけではなく、その目的や内容、区別によって生じる効果に合理的な理由があるかどうかです。

嫡出子・嫡出でない子の区別が問題となる理由

この区別は、父母が法律上の婚姻関係にあるかどうかに関係します。子自身が選べない父母の事情を基準に法的な不利益を与える場合、法の下の平等との関係が問題になります。

もっとも、出生届に区分を記載させることと、その区分を理由に法律上の不利益を与えることは別の問題です。

戸籍法の出生届記載をめぐる最高裁判例

事件の概要

婚姻関係にない男女の間に子が生まれ、出生届が提出されました。しかし、届書に「嫡出子又は嫡出でない子の別」を記載しなかったため、届出は受理されませんでした。その結果、子の戸籍や住民票への記載もされませんでした。

届出をした者らは、この記載を求める戸籍法の規定が憲法14条1項に違反すると主張し、国家賠償法に基づき慰謝料の支払い等を求めました(最判平成25年9月26日)。

最高裁の判断

最高裁は、出生届について、子が生まれた事実を報告するための手続であり、届出によって身分関係の発生などの法的効果が生じるものではないと説明しました。

子が嫡出子または嫡出でない子に当たるか、また嫡出でない子の身分関係上の地位がどうなるかは、民法の親子関係に関する規定によって決まります。出生届の記載が子の法的地位を直接決めるわけではありません。

なぜ出生届への記載は違憲ではないとされたのか

記載の目的は戸籍事務の処理にある

最高裁は、出生届への記載は、父母の婚姻関係を前提とした身分関係や戸籍上の取扱いの違いを踏まえ、戸籍事務を処理するためのものにとどまると判断しました。

つまり、この記載規定によって、嫡出でない子に新たな不利益や異なる法的地位が生じる仕組みではないということです。

文言の問題と憲法上の差別は区別される

「嫡出でない子」という表現の当否を論じることはできます。しかし、最高裁は、法令上この言葉が法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子を意味する用語として使われていることを踏まえ、文言の使用だけで不合理な差別とはいえないとしました。

この判例から分かること

  • 法律上の区別があるだけで、直ちに憲法違反になるわけではない
  • 区別の目的・内容・効果に合理性があるかを検討する
  • 出生届の記載は、子の身分を新たに決めるものではなく、戸籍事務の処理に関するものとされた
  • 記載規定の合憲性と、嫡出子・嫡出でない子にどのような法的差を設けられるかは別問題である

まとめ

戸籍法の出生届に「嫡出子又は嫡出でない子の別」を記載させる規定について、最高裁は、憲法14条1項の法の下の平等に違反しないと判断しました。

出生届は出生の事実を報告する手続であり、記載によって子の身分関係を決めるものではありません。最高裁は、記載規定自体によって嫡出でない子に不合理な法的不利益が生じる仕組みかどうかを検討し、違憲ではないと判断したのです。