他人の物を弁済として渡した場合、取り戻せる?民法のルールを解説

借金の返済などに、自分が所有していない物を渡した場合でも、「他人の物を渡したのだから、すぐに返してもらえる」とは限りません。民法には、弁済として引き渡した物の取戻しについて、特別なルールがあります。

他人の物を弁済として渡した場合、原則としてすぐには取り戻せない

弁済とは債務を履行すること

弁済とは、契約などで負担した債務を、その内容に従って履行することです。たとえば、借金を返すために金銭を支払ったり、引き渡すべき物を渡したりする行為が弁済にあたります。

通常は債務者が弁済しますが、弁済のために、債務者以外の人が物を渡すこともあります。また、弁済者が他人の物を弁済に使うケースもあります。

このように、弁済者が他人の物を弁済として引き渡した場合について、民法475条が定めています。

取り戻すには、さらに有効な弁済が必要

弁済者が他人の物を債権者に渡したときは、その物を直ちに取り戻せるわけではありません。弁済者が、改めて債務の内容に従った有効な弁済をしなければ、元の物を取り戻すことはできないとされています。

たとえば、知人から借りたカメラを、所有者の承諾を得ないまま借金の返済として債権者に渡したとします。この場合、カメラが自分の物ではないことだけを理由に、債権者へすぐ返還を求めることはできません。まず、借金について有効な弁済を改めて行う必要があります。

他人の物を取り戻せるのは、改めて有効な弁済をした場合

民法475条の「さらに有効な弁済」とは、たとえば本来支払うべき金銭を支払うなど、債務の内容に沿った弁済を改めて行うことです。その弁済によって、債権者が受けるべき履行が有効に行われる必要があります。

取り戻しの流れは、次のとおりです。

  1. 弁済として渡した物が、弁済者自身の所有物ではない
  2. その物を債権者に引き渡している
  3. 債務について、改めて有効な弁済をする
  4. その後、先に渡した物の返還を求める

つまり、他人の物を渡したことだけでは足りず、先に有効な弁済を完了させることがポイントです。

債権者が善意で物を消費・譲渡した場合は、弁済が有効になる

例外として、債権者が、受け取った物が他人の物であることを知らずに消費した場合や、第三者へ譲渡した場合には、その弁済は有効なものとして扱われます(民法476条)。「善意」とは、ここでは他人の物であることを知らないことを意味します。

この場合、弁済は有効として扱われます。そのため、債権者が第三者から賠償請求を受けたときは、弁済者に対して求償権を行使することができます。

まとめ

他人の物を弁済として渡した場合、原則として、渡した物をすぐに取り戻すことはできません。取り戻すには、まず債務について改めて有効な弁済をする必要があります。

ただし、債権者が他人の物だと知らずに消費・譲渡した場合は、弁済が有効として扱われます。実際の返還請求や賠償の問題では、物の所有関係や債権者の認識などを確認することが重要です。