損益相殺とは?不法行為の損害賠償額から控除される利益を解説

不法行為によって損害を受けた場合でも、その不法行為を契機として被害者や遺族が利益を得ることがあります。このような場合に、利益を損害賠償額から差し引くことを損益相殺といいます。

損益相殺とは

不法行為を原因として得た利益を賠償額から差し引くこと

損益相殺は、不法行為によって損害が発生した一方で、その不法行為を原因として被害者側に利益が生じた場合に、その利益を損害賠償額から控除する考え方です。

たとえば、退職年金の受給者が不法行為によって死亡し、遺族がその死亡を原因として遺族年金の受給権を取得した場合、その遺族年金が損害賠償額の計算に反映されます。

利益があれば必ず控除されるわけではない

被害者が何らかの利益を得たとしても、すべてが損益相殺の対象になるわけではありません。利益の性質や不法行為による損害との関係を踏まえて判断されます。

損害賠償額から控除される利益

支給が確定した遺族年金

退職年金の受給者が不法行為によって死亡し、遺族がその死亡を原因として遺族年金の受給権を取得した場合、支給を受けることが確定した遺族年金は、その額の限度で損害賠償額から控除されます。

将来受け取る可能性がある遺族年金をすべて控除するのではなく、支給を受けることが確定した遺族年金が対象となる点に注意が必要です。

損害賠償額から控除されない利益

生命保険金

被害者が付保していた生命保険から支払われる保険金は、損益相殺の対象になりません。生命保険金は、被害者が払い込んだ保険料の対価であり、不法行為による損害を補てんする目的のものとはいえないためです。

死亡した幼児について不要になった養育費

交通事故などで幼児が死亡した場合、将来支出するはずだった養育費が不要になります。しかし、この養育費については、損益相殺の対象となる利益として損害賠償額から差し引くことはできません。

建て替え対象の建物に住んでいた利益

売買の目的物である新築建物に重大な瑕疵(欠陥)があり、建て替えざるを得ない場合でも、居住していた利益が当然に控除されるわけではありません。特に、瑕疵が構造耐力上の安全性にかかわり、建物が倒壊する具体的なおそれがあるなど、社会通念上、建物自体が社会経済的な価値を有しないと評価される場合、買主が居住していた利益は、工事施工者などに対する建て替え費用相当額の損害賠償請求において控除されません。

損益相殺を踏まえた損害賠償額の考え方

不法行為によって生じた損害を算定したうえで、不法行為を原因として得た利益のうち、損益相殺の対象となるものを控除します。

したがって、単に利益を得たかどうかだけで決まるわけではありません。遺族年金のように控除される利益がある一方、生命保険金や幼児の養育費、一定の場合の居住利益のように控除されないものもあります。

まとめ

  • 損益相殺とは、不法行為を原因として得た一定の利益を損害賠償額から差し引くことです。
  • 支給を受けることが確定した遺族年金は、その額の限度で損益相殺の対象となります。
  • 生命保険金は、損害を補てんする目的のものではないため、損益相殺の対象となりません。
  • 死亡した幼児の養育費や、重大な瑕疵がある建物の一定の場合の居住利益も、損益相殺の対象とはなりません。
  • 控除の可否は、利益の性質と不法行為による損害との関係から判断されます。