行政上の農地買収や国税の差押えに民法177条は適用される?

行政機関が関与する不動産の処分であっても、民法177条が常に適用されないわけではありません。民法177条は、不動産の所有権などの権利が移転・変更した場合に、その権利を第三者へ主張するためには登記が必要であると定める規定です。

判例上の結論は、手続の性質によって分かれます。行政処分として行われる農地買収には適用されませんが、国税滞納処分による差押えには適用されます。

行政処分による農地買収には民法177条は適用されない

自作農創設特別措置法による農地買収処分

旧自作農創設特別措置法による農地買収は、国が農地を強制的に買収する制度でした。

民法177条は、私経済上の取引の安全を保障するための規定です。そのため、行政処分によって農地を買収する場面には、同条は適用されないと判断されています。

最大判昭和28年2月18日は、自作農創設特別措置法に基づく農地買収処分について、民法177条の適用を否定しました。

国が取得した後の関係には適用される

もっとも、民法177条が適用されないのは、あくまで行政処分として農地を買収する場面です。国が買収処分によって所有権を取得した後、国と第三者との間で所有権の帰属が問題となる場合まで、同条の適用がなくなるわけではありません。

最大判昭和41年12月23日も、国が農地を取得した後の第三者との関係では、民法177条の適用が排除されないとしています。

国税滞納処分による差押えには適用される

国税の滞納処分による差押えは行政上の手続ですが、国は単に行政機関として処分するのではありません。租税債権を回収する債権者として、自ら強制執行を行う立場にあります。

この国の立場は、民事執行における差押債権者に近いものです。したがって、租税債権が公法上の債権であることだけを理由に、民法177条の適用を否定することはできません。

最判昭和31年4月24日は、国税滞納処分による差押えにも民法177条が適用されると判示しました。

まとめ

  • 行政上の手続だからといって、民法177条が一律に適用されないわけではない
  • 旧自作農創設特別措置法による農地買収処分には、民法177条は適用されない
  • ただし、国が農地を取得した後の第三者との関係では、民法177条が適用される
  • 国税滞納処分による差押えには、民法177条が適用される

重要なのは、行政機関が関与しているかどうかだけではなく、農地買収や差押えがどのような法的性質を持つ手続なのかという点です。