地方公共団体の公共工事では、参加業者をあらかじめ選ぶ指名競争入札が利用されることがあります。では、特定の業者を指名せず、継続的に入札から排除することも許されるのでしょうか。
結論として、地方公共団体には指名業者を選ぶ一定の裁量があります。しかし、考慮すべき事情を見ず、所在地など一つの形式的な事情だけを理由に業者を一律排除すると、裁量権の逸脱・濫用となる可能性があります。
指名競争入札では業者を自由に排除できるのか
公共工事の契約は一般競争入札が原則
地方公共団体が締結する契約は、地方自治法234条により、一般競争入札が原則です。一般競争入札は、不特定多数の業者を参加させ、地方公共団体にとって最も有利な条件を示した相手方を決める方法です。
これに対し、指名競争入札は、一定の水準を満たす業者を地方公共団体が指名し、その業者間で競争させる方法です。指名競争入札は、一般競争入札の例外であり、政令で定められた場合に限って利用できます。
指名しないこと自体が直ちに違法となるわけではない
指名競争入札では、すべての業者が当然に参加できるわけではありません。そのため、ある工事で指名されなかったというだけで、直ちに違法となるとは限りません。
ただし、特定の業者を継続的に指名しない場合や、すべての工事から外す場合は、その判断が合理的な基準に基づくものか、具体的な事情を踏まえているかが問題になります。
地方公共団体の裁量が違法となるケース
裁量権の逸脱・濫用が問題となる判断
地方公共団体が指名業者を決める際には、複数の事情を考慮する必要があります。しかし、次のような運用は裁量の限界を超える可能性があります。
- 考慮すべき事情を十分に考慮していない
- 複数の判断要素があるのに、一つの事情だけを過度に重視している
- その事情を理由に、他の条件を確認せず排除している
- 社会通念上、著しく妥当性を欠く方法で運用している
たとえば、主たる営業所が一定地域内にないという理由だけで、他の条件を確認せず、業者をすべての指名競争入札から外すケースです。このような一律的な扱いは、合理性を欠くと評価される可能性があります。
排除の適法性は具体的な事情を踏まえて判断される
適法かどうかは、排除の理由だけでなく、これまでの指名・入札参加の状況、業者の所在地などの具体的な事情を踏まえて判断されます。また、排除が特定の工事だけなのか、すべての工事に及ぶのかも重要です。
判例が示した指名競争入札からの業者排除の限界
最判平成18年10月26日の判断
この判例では、長年にわたり村の公共工事で指名されていた建設業者が、ある年度以降、まったく指名されなくなったことが問題となりました。村は、業者の主たる営業所が村内にないことを理由に、村外業者として扱っていました。
最高裁は、法令の趣旨に反する運用基準の下で、村外業者であることだけを理由に、他の条件を考慮せず、すべての工事について指名しない措置を採ったのであれば、極めて不合理で、社会通念上著しく妥当性を欠くと判断しました。考慮すべき事項を十分に考慮せず、一つの要素だけを重視した場合、裁量権の逸脱・濫用がないとはいえないとしたものです。
判例から分かる結論
地方公共団体は、指名競争入札で参加業者を選定できます。しかし、その裁量は無制限ではありません。所在地など形式的な事情だけで業者を一律・継続的に排除することは、違法となる可能性があります。指名基準を設ける場合も、具体的な事情を踏まえ、合理的に運用する必要があります。
まとめ
指名競争入札で業者が指名されないこと自体は、直ちに違法とは限りません。ただし、指名競争入札は一般競争入札の例外であり、地方公共団体の判断にも裁量の限界があります。
他の条件を確認せず、所在地など一つの事情だけを理由に、業者をすべての工事から排除する措置は、裁量権の逸脱・濫用となる可能性があります。
