原告適格を認めた判例一覧|周辺住民や既存業者が取消訴訟を提起できる場合

原告適格とは、取消訴訟を提起することができる資格をいいます。行政事件訴訟法9条1項では、処分または裁決の取消しを求めることについて「法律上の利益を有する者」に限り、取消訴訟を提起できると定めています。

「法律上の利益」とは、行政法規が個人の利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課すことによって保障される利益をいいます(主婦連ジュース不当表示事件・最判昭53・3・14)。公益の実現によって、たまたま個人が受ける利益である反射的利益とは区別されます。

第三者の原告適格を判断する基準

処分または裁決の相手方以外の第三者については、行政事件訴訟法9条2項に基づき、根拠法令の規定の文言だけでなく、次の事情を考慮して法律上の利益の有無を判断します。

  • 当該法令の趣旨・目的
  • 当該法令と目的を共通にする関係法令がある場合の、その趣旨・目的
  • 当該処分において考慮されるべき利益の内容・性質
  • 根拠法令に違反して処分がされた場合に利益が害される態様・程度

原告適格を認めた判例一覧

既存業者・競願関係にある者

判例 原告適格が認められた者
公衆浴場の営業許可事件
(最判昭37・1・19)
営業許可を争う既存の公衆浴場業者
放送局の開設予備免許事件
(最判昭43・12・24)
第三者への予備免許の付与を争う、競願関係にある者

周辺住民

判例 原告適格が認められた者
定期航空運送事業免許事件
(最判平元・2・17)
空港の騒音に悩む周辺住民
もんじゅ訴訟
(最判平4・9・22)
原子炉事故等による災害について、直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の周辺住民
開発許可事件
(最判平13・3・13)
土砂の流出や崩壊の災害により直接的な被害を受けることが予想される地域の居住者
小田急線連続立体交差化鉄道事業認可事件
(最大判平17・12・7)
事業の実施により、騒音・振動等による健康または生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある、事業地周辺の住民
納骨堂の経営許可事件
(最判令5・5・9)
納骨堂の所在地からおおむね300m以内の場所に敷地がある人家に居住する者

個別の利益を侵害された者

森林法の保安林指定解除事件(最判昭57・9・9)では、保安林の指定が解除され、自己の利益を侵害された者について、原告適格が認められました。

原告適格が認められなかった判例との違い

質屋の新規営業許可事件(最判昭34・8・18)では、既存業者についても原告適格が認められませんでした。また、病院開設許可事件(最判平19・10・19)では、付近の医師やその医師らが加入する医療法人等について原告適格が認められませんでした。

このように、既存業者や周辺住民という立場だけで、直ちに原告適格が認められるわけではありません。根拠法令の趣旨・目的や、処分によって害される利益の内容・性質、被害の態様・程度などを踏まえ、法律上保護された個別的利益があるかが判断されます。