国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときに、国又は公共団体が賠償責任を負うことを定めています。
「公権力の行使」という言葉から、逮捕や許可、命令など権力的な行為だけを思い浮かべるかもしれません。しかし、判例・通説では、行政指導や公立学校の教育活動のような非権力的な活動も含まれ得ます。
国家賠償法1条の「公権力の行使」の意味
権力的な行政行為だけに限られない
国家賠償法1条の「公権力の行使」は、行政事件訴訟法上の「処分性」と同じ意味ではありません。判例・通説は、行政行為などの権力的作用に限らず、行政指導などの非権力作用も広く含めています。
純粋な私経済作用(例えば、市営地下鉄の運営)と、国家賠償法2条が適用される事項以外のすべての行政作用が「公権力の行使」となるとするのが、判例・通説の考え方です。
該当しても賠償責任が直ちに成立するわけではない
行為が「公権力の行使」に当たるとしても、それだけで賠償責任が認められるわけではありません。公務員が職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたことが必要です。
行政指導は「公権力の行使」に含まれるのか
行政指導も対象になり得る
行政指導のような非権力的な活動も、国家賠償法1条の「公権力の行使」に含まれ得ます。
判例では、開発指導要綱に基づく教育施設負担金について、納付しなければ水道の給水契約の締結や下水道の使用を拒絶されると考えさせるような行政指導が問題となりました。このように、行政指導に従うことを事実上余儀なくさせる場合には、任意に寄付金の納付を求める行政指導の限度を超え、違法な公権力の行使と評価されます。
公立学校の教育活動は「公権力の行使」に含まれるのか
教育・監視・指導も含まれる
判例は、公立学校における教師の教育活動を、国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に含めています。授業中の指導だけでなく、公立中学校の課外クラブ活動における教師の監視・指導も対象となります。
もっとも、学校活動中に事故が起きただけで、直ちに賠償責任が成立するわけではありません。危険を伴う技術を指導する場合に、事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき注意義務に違反し、その結果、生徒に損害が生じた場合に、自治体の責任が問題となります。
判断のポイント
「公権力の行使」に当たるかは、権力的な行政行為であるか、任意の行政指導であるかという形式だけで決まりません。純粋な私経済作用や国家賠償法2条が適用される事項を除き、行政作用に当たるかを踏まえて判断されます。
したがって、行政指導や公立学校の教育活動も対象となり得ますが、最終的には、故意又は過失、違法性、損害など、国家賠償法1条の要件を満たすかどうかを個別に検討する必要があります。
