国家賠償法1条の成立要件とは?公務員の違法行為で損害が生じた場合を解説

公務員の行為によって損害を受けても、直ちに国や自治体へ損害賠償を請求できるわけではありません。国家賠償法1条1項が定める要件を満たす必要があります。この記事では、公務員の行為を対象とする国家賠償法1条の成立要件を整理します。なお、公の営造物の設置・管理の瑕疵は、原則として同法2条の問題です。

国家賠償法1条1項の成立要件を条文から確認

国家賠償法1条1項の規定

国家賠償法1条1項は、国または公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人へ損害を加えたとき、国または公共団体が賠償責任を負うと定めています。

したがって、主な成立要件は次の6つです。

  1. 国または公共団体の公権力の行使に当たること
  2. 公務員が職務を行うについて行ったこと
  3. 故意または過失があること
  4. 行為が違法であること
  5. 他人に損害を加えたこと
  6. 行為と損害との間に因果関係があること

成立要件を満たす場合の基本的な効果

要件を満たすと、国または公共団体が被害者に賠償します。国家賠償法1条1項に基づき、公務員個人が被害者へ直接賠償責任を負うのではなく、国または公共団体が賠償の責任を負います。

ただし、公務員に故意または重大な過失があったときは、国または公共団体がその公務員に対して求償権を有します。

国家賠償法1条の各成立要件

「公権力の行使に当たる公務員」であること

公権力の行使は、行政処分のような権力的行為だけではありません。判例・通説上、行政指導などの非権力的な行政作用も含まれ得ます。他方、純粋な私経済作用や、国家賠償法2条が適用される事項は、1条の対象外です。たとえば、市営地下鉄の運営は純粋な私経済作用に当たるとされています。

また、公務員法上の身分を持つ者に限られず、独立行政法人や、国または公共団体から公権力の行使を委託された民間事業者、指定確認検査機関などが対象となる場合もあります。公共団体には、地方公共団体のほか、弁護士会などが含まれると解されています。

「職務を行うについて」行われたこと

実際に権限の範囲内だったかだけでなく、外部から見て職務行為に見えるかが重視されます。これを外形標準説といいます。たとえば、非番の警察官が制服を着て職務質問を装い、違法行為をした場合のように、客観的に職務執行の外形を備える行為によって損害が生じたときは、所属する公共団体の責任が問題となり得ます。

「故意または過失」があること

1条の責任が成立するためには、公務員が故意または過失によって損害を加えたことが必要です。「故意または過失」は公務員の主観的要件であり、どちらか一方を満たす必要があります。

「違法に」損害を加えたこと

単に不利益な結果になったことや、後から行政判断が誤りと分かったことだけで違法になるわけではありません。公務員が職務上負う法的義務に違反したかが問題となります。違法性と故意・過失は別の要件であり、原則として両方が必要です。

違法性が問題となり得るのは、違法な行政指導、申請に対する不作為、規制権限を行使しないこと、公立学校での教育活動における注意義務違反、警察官の捜査・追跡における注意義務違反などです。

もっとも、立法行為や裁判官の裁判行為、検察官の公訴提起、経済政策・税務署長の更正などでは、国家賠償責任の成立範囲が限定されます。立法の内容に憲法違反の疑いがあるだけ、裁判の結論に不服があるだけ、無罪判決が確定しただけでは、直ちに国家賠償責任は成立しません。

立法行為については、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず、国会があえて立法を行うような、容易に想定し難い例外的な場合を除き、違法とは評価されません。裁判官の裁判行為についても、違法または不当な目的で裁判をしたなど、権限の趣旨に明らかに背いて行使した特別の事情が必要です。また、無罪判決が確定した場合でも、公訴提起時に合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば、公訴提起は違法とはなりません。

経済政策の決定は、政府の裁量的な政策判断に委ねられる事項であり、判断を誤ったり、措置が適切でなかったりしただけでは、国家賠償責任は生じません。税務署長の更正も、所得金額を過大に認定しただけでは直ちに違法とはならず、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、漫然と更正した事情がある場合に違法と評価されます。