道路の騒音や排気ガスで国家賠償請求できる?国道43号線事件を解説

交通量の多い道路の近くで暮らしていると、車の走行音や排気ガスに悩まされることがあります。このような被害について、国や自治体に損害賠償を求められる場合があります。

ただし、道路があることや、多少の騒音・排気ガスが発生していることだけで、直ちに請求が認められるわけではありません。ポイントは、被害が社会生活上、受忍すべき限度を超えているかです。

道路の騒音や排気ガスで国家賠償請求できる?

被害が受忍限度を超えていれば請求できる可能性がある

国家賠償法2条1項は、道路などの「公の営造物」に設置・管理の瑕疵(通常有すべき安全性を欠く状態)があり、そのために他人へ損害が生じた場合、国や公共団体が賠償責任を負うと定めています。

道路からの騒音や排気ガスについても、周辺住民に現実の被害が生じ、その程度が社会生活上受忍すべき限度を超えていると判断されれば、道路の設置・管理に瑕疵があると認められる可能性があります。

一方で、騒音や排気ガスが少しでもあれば請求できるという意味ではありません。被害の程度や継続状況などを具体的に検討する必要があります。

道路の物理的な欠陥がなくても対象になる

道路に穴が開いているといった物理的な欠陥がなくても、道路を供用すること自体が、利用者以外の周辺住民に危害を及ぼす状態であれば、設置・管理の瑕疵が問題になります。そのため、道路を利用していない沿道住民も、国家賠償法2条1項による保護の対象となり得ます。

国家賠償法2条で道路管理者の責任が認められる条件

道路は「公の営造物」に含まれる

「公の営造物」とは、国や公共団体が公の目的に使っている有体物をいいます。道路は、その代表例です。

管理者の過失がなくても責任が生じ得る

設置・管理の瑕疵があるかどうかは、道路の構造、利用状況、場所の環境などを総合的に考えて判断されます。また、国家賠償法2条1項の責任には、原則として道路管理者の故意や過失は必要ありません。

国道43号線事件で最高裁が示した判断

受忍限度を超える被害があれば瑕疵が認められ得る

国道43号線事件では、周辺住民が、自動車による騒音や排気ガスなどで被害を受けたとして、道路の設置・管理者に損害賠償を求めました。

最高裁は、道路の供用によって周辺住民に社会生活上受忍すべき限度を超える被害が生じた場合、原則として国家賠償法2条1項の責任を免れられないと判断しました。

最低基準が必須というわけではない

騒音レベルや排気ガス濃度について、あらかじめ最低基準を確定しなければ、瑕疵を認定できないわけではありません。実際に受忍限度を超える被害が生じたと認められれば、その事実から道路が危害を及ぼす危険性のある状態だったと判断できます。

受忍限度を判断する際の事情

裁判所は、次の事情を総合的に考慮します。

  • 騒音や排気ガスによる侵害の態様と程度
  • 被害を受けた利益の性質と内容
  • 道路の公共性や公益上の必要性
  • 被害が始まってからの経過や継続状況
  • 被害防止措置の有無、内容、効果

なお、道路管理者の回避可能性があったことは、道路の設置・管理の瑕疵を認めるための積極的要件ではありません。