基本的人権は人間のための権利なのに、会社などの法人にも保障されるのでしょうか。結論からいうと、法人にも、性質上可能な限り基本的人権が保障されます。ただし、自然人と同じように、すべての人権が認められるわけではありません。
法人にも基本的人権は保障される
原則:性質上可能な限り法人にも保障される
日本国憲法の人権規定は、もともと自然人である国民を主な対象としています。しかし、法人も経済活動や政治的活動を行います。そして、法人の活動は自然人を通じて行われ、最終的には自然人に帰属します。
そのため、人権の性質上可能な限り、内国法人にも憲法上の保障が及ぶと考えられています。これが「性質上可能な限り」という原則です。
法人の人権保障には限界がある
法人は自然人とは異なるため、すべての人権がそのまま保障されるわけではありません。どの人権が法人に適用されるかは、人権の性質から判断されます。
法人にも政治的な活動に関する自由が認められるかが問題となった代表的な判例が、八幡製鉄事件です。
八幡製鉄事件で何が問題になったのか
事件の概要
八幡製鉄事件では、会社が政党に政治資金を寄付したことが問題となりました。この寄付が会社の目的の範囲内の行為に当たるのか、そして、その寄付を行った取締役に責任があるのかが争われた事件です。
最高裁判所の判断
最高裁判所は、憲法に定められた国民の権利や義務に関する規定は、性質上可能な限り、内国法人にも適用されると判断しました。
そのうえで、会社は政治的行為の自由の一環として、政党に政治資金を寄付する自由を有するとしました。つまり、会社にも政治的行為の自由が認められることを示したのです。
八幡製鉄事件のポイント:法人の活動は目的の範囲内で認められる
この判例で重要なのは、「法人にも人権がある」とされた点だけではありません。法人が行った行為が、その法人の目的の範囲内に含まれるかどうかも問題になります。
最高裁判所は、会社による政治資金の寄付について、客観的・抽象的にみて、会社の社会的役割を果たすための行為と認められる限り、会社の目的の範囲に属すると判断しました。
したがって、法人の人権保障は自然人とまったく同じではありません。法人の性質に応じて、保障される人権の範囲が決まります。
まとめ
- 法人にも、性質上可能な限り基本的人権が保障される
- ただし、すべての人権がそのまま認められるわけではない
- 八幡製鉄事件では、会社の政治的行為の自由と政党への政治資金の寄付が問題となった
- 法人の行為が目的の範囲内にあるかは、会社の社会的役割などを踏まえて判断される
法人の基本的人権を理解するうえでは、すべての人権が無条件に認められるのではなく、「性質上可能な限り」保障されるという点が重要です。
