表現の自由を規制する立法が漠然として不明確だと、どのような行為が規制されるのか分からず、表現行為に対して萎縮的効果を及ぼすおそれがあります。このため、精神的自由権を規制する立法には、明確さが求められます。
明確性の原則とは
表現の自由を規制する立法を明確に定める原則
明確性の原則とは、精神的自由権を規制する立法は明確でなければならないとする理論です。
法文上不明確な法律は、どこまでが許されるのか分からず、表現行為に対して萎縮的効果を及ぼします。そのため、法文上不明確な法律は、原則として無効となります。
不明確な法律が表現の自由を萎縮させる理由
規制の範囲が不明確だと、どのような表現が規制されるのか分からないため、表現行為を控えることにつながります。明確性の原則は、このような表現活動への萎縮的効果を防ぐ役割を持ちます。
法律が不明確かどうかを判断する基準
一般人が規制対象を判断できる基準が読み取れるか
刑罰法規があいまいで憲法に違反するかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的な場合にその行為が法律の適用を受けるかどうかを判断できる基準が読み取れるかによって判断されます。
抽象的な文言でも直ちに違憲とは限らない
法律の文言が抽象的でも、具体的な場合に適用を受けるかどうかを判断する基準を読み取れるなら、直ちに明確性を欠くとはいえません。反対に、そのような基準を読み取れない場合には、明確性の原則に反することになります。
明確性の原則が問題となった判例:徳島市公安条例事件
事件の概要
集団示威行進(デモ行進)で条例により禁止されている蛇行進を行い、また、蛇行進を行うよう煽動したとして、道路交通法違反や条例違反で起訴された事件です。条例には、集団行進などについて「交通秩序を維持すること」と定められており、この表現が刑罰法規として不明確ではないかが争われました。
最高裁判所の判断
最高裁判所は、文言が抽象的であることは認めました。しかし、集団行進などにおける道路交通の秩序遵守についての基準を読み取ることは可能であると判断しました。そのため、犯罪構成要件の内容をなすものとして明確性を欠くものではなく、憲法31条にも違反しないとしました。
判例からわかる明確性の原則のポイント
この判例からは、文言が抽象的であるだけで直ちに違憲となるわけではないことが分かります。通常の判断能力を有する一般人が、具体的な場合に規制対象となるかどうかを判断できる基準を読み取れるかが重要です。
まとめ
明確性の原則とは、表現の自由などの精神的自由権を規制する立法に、一般人が規制対象を判断できる明確さを求める理論です。不明確な法律は、どこまでが許されるのか分からず、表現行為に対して萎縮的効果を及ぼします。
もっとも、文言が抽象的であるだけで、直ちに明確性の原則に反するわけではありません。具体的な場合に法律の適用を受けるかどうかを判断する基準を読み取れるかによって、不明確性が判断されます。
