共同相続した不動産を一人の相続人が売却したら?登記なしで持分を主張できるか

共同相続した不動産を一人の相続人が売却しても、他の相続人は登記なしで持分を主張できる

結論|売却した相続人は、他の相続人の持分まで処分できない

共同相続では、被相続人が亡くなった時点で、複数の相続人が法定相続分に応じた不動産の持分を取得します。そのため、相続人の一人が不動産全体を自分だけのものとして第三者に売却しても、他の相続人の持分まで買主に移すことはできません。

他の相続人は、相続登記をしていなくても、自分の法定相続分に相当する持分を買主に主張できます。ただし、売却した相続人の持分については、売買の対象となり得ます。不動産全体が当然に他の相続人の単独所有になるわけではありません。

事例で確認

父親が亡くなり、長男と次男が土地を2分の1ずつ相続したとします。長男が、土地全体を自分の単独所有であるかのように第三者へ売却しました。

この場合、次男が相続登記をしていなくても、次男は自分の2分の1の持分を買主に主張できます。一方、長男の2分の1については、売買の対象となり得ます。

なぜ登記なしで持分を主張できるのか

相続による持分の取得は、相続開始時に生じる

民法896条本文により、被相続人の所有物の所有権は、相続開始時、つまり被相続人が亡くなった時に相続人へ移転します。相続人が複数いる場合、不動産は各相続人の相続分に応じた共有となります。

つまり、登記をしていなくても、相続開始時から法律上の持分を取得しています。登記は、その権利を第三者に主張するために必要となる場合がありますが、共同相続人が法定相続分を取得したという事実そのものを、登記がないことで失うわけではありません。

他の相続人の持分について、売却した相続人は無権利者となる

一人の相続人が不動産全体を売却しても、他の相続人の持分については処分する権限を持っていません。その持分に関しては、売却した相続人は無権利者です。

民法177条は、不動産の権利変動を登記なしで主張できない相手を、登記の欠缺を主張する正当な利益を持つ第三者としています。しかし、他の相続人の持分について無権利者から買った者は、その持分に関する正当な第三者とは扱われません。また、民法899条の2第1項の相続と登記のルールによっても、法定相続分に相当する持分を主張できなくなるわけではありません。

登記なしで主張できる範囲と注意点

登記なしで主張できるのは、原則として自分の法定相続分

登記なしで買主に主張できるのは、原則として自分が相続によって取得した法定相続分です。売却した相続人の持分まで、登記なしで取得できるわけではありません。

したがって、相続人が2人で各2分の1を相続した場合、売却に関与していない相続人は自分の2分の1を買主に主張できます。相続人の人数や続柄によって法定相続分は変わるため、具体的な持分の確認が必要です。

遺産分割で取得した持分を主張する場合は別の扱いになる

共同相続の後、遺産分割によって一人の相続人が不動産を単独で取得した場合は、法定相続分を相続開始時から主張する場面とは異なります。遺産分割によって変更された権利を第三者に主張するには、原則として登記が必要です。

「法定相続分として取得した持分」と「遺産分割によって他の相続人から取得した持分」は、登記の扱いが異なるため、混同しないことが大切です。

まとめ

  • 共同相続した不動産を一人の相続人が売却しても、他の相続人の持分まで買主に移すことはできません。
  • 他の相続人は、相続登記がなくても、自分の法定相続分に相当する持分を買主に主張できます。
  • ただし、登記なしで主張できるのは原則として自分の法定相続分であり、売却した相続人の持分まで取得できるわけではありません。
  • 遺産分割によって取得した持分を第三者に主張する場合は、登記が必要になることがあります。