結論として、取得時効が完成した後に元の所有者から不動産を取得し、先に登記を備えた第三者に対しては、原則として時効取得者も登記を備えなければ対抗できません。
ただし、第三者の登記後も占有を続け、改めて時効取得に必要な期間が経過した場合や、第三者が背信的悪意者に当たる場合には、登記がなくても対抗できることがあります。
取得時効完成後の第三者には、原則として登記が必要
取得時効とは、一定期間、所有する意思をもって不動産を占有することにより、その所有権を取得する制度です。時効が完成した後、占有者が登記をしないままにしていると、元の所有者が別の第三者へ不動産を譲渡し、その第三者が先に登記をする場合があります。
この場合、時効取得者と第三者は、元の所有者から同じ不動産について二重に権利を取得したように扱われます。そのため、民法177条により、時効取得者は原則として登記がなければ第三者に時効取得を主張できません。
時効完成前の譲渡との違い
たとえば、土地を10年間占有して時効が完成する予定の人がいるとします。元の所有者が占有開始から6年目に土地を第三者へ譲渡した場合、その第三者が後から登記をしても、占有者は登記なしで時効取得を対抗できることがあります。
一方、10年間の占有が終わって時効が完成した後、元の所有者が第三者へ譲渡し、第三者が登記をした場合は結論が異なります。この場合、時効取得者は第三者に対抗するため、原則として登記が必要です。
取得時効完成後でも登記なしで対抗できる例外
第三者の登記後も占有を続けた場合
第三者が登記をした後も占有者が占有を継続し、その後、取得時効に必要な期間が改めて経過した場合があります。この新たな時効を援用すれば、第三者に対して登記がなくても時効取得を主張できることがあります。
第三者が背信的悪意者の場合
第三者が、時効取得者による長年の占有を知っていただけでは、直ちに背信的悪意者とはいえません。しかし、長年の占有を認識したうえで、時効取得者が登記をしていないことを主張することが信義則に反する事情がある場合には、背信的悪意者と判断されることがあります。
この場合、時効取得者は登記がなくても第三者に時効取得を対抗できます。
抵当権が設定された場合
取得時効完成後、元の所有者が第三者のために抵当権を設定し、その登記をした場合でも、占有者がその後も必要な期間、占有を続けて時効取得を援用すれば、原則として抵当権が消滅することがあります。ただし、占有者が抵当権の存在を容認していたなど、特段の事情がある場合は別です。
まとめ
- 取得時効完成後に第三者が登記を備えた場合、原則として時効取得者にも登記が必要です。
- 時効完成前に第三者へ譲渡された場合は、登記なしで対抗できることがあります。
- 第三者の登記後も占有を続け、新たな時効期間が経過した場合は例外となることがあります。
- 第三者が背信的悪意者の場合も、登記なしで対抗できることがあります。
