占有訴権とは、本権の有無にかかわらず、占有者に認められる権利です。占有が妨害されているのか、妨害されるおそれがあるのか、すでに占有を奪われたのかによって、利用する訴えが異なります。
占有訴権とは?3種類の訴えの違い
占有訴権には、次の3種類があります。
- 占有保持の訴え
- 占有保全の訴え
- 占有回収の訴え
占有保持の訴え
現に占有を妨害されている場合に行使する訴えです。妨害の停止と損害賠償を請求できます(民法198条)。
占有保全の訴え
現に占有が妨害されているわけではないものの、占有を妨害されるおそれがある場合に行使します。請求できるのは、妨害の予防または損害賠償の担保です(民法199条)。
占有回収の訴え
窃取や強盗などによって占有を奪われた場合に、占有物の返還と損害賠償を求める訴えです(民法200条1項)。一方、詐欺の相手方や、賃借物の返還を拒んでいる賃借人に対しては、占有回収の訴えを提起することができません。
なお、占有回収の訴えは、悪意の特定承継人には提起できますが、善意の特定承継人には提起できません(民法200条2項)。
| 種類 | 利用する場面 | 請求内容 |
|---|---|---|
| 占有保持 | 現に妨害されている | 妨害の停止・損害賠償 |
| 占有保全 | 妨害のおそれがある | 妨害の予防・損害賠償の担保 |
| 占有回収 | 占有を奪われた | 占有物の返還・損害賠償 |
占有訴権の提起期間
占有保持の訴え
妨害が存在する間、または妨害が消滅した後1年以内に提起します。ただし、工事による妨害は、工事着手時から1年を経過した場合、または工事が完成した場合、提起できません(民法201条1項)。
占有保全の訴え
妨害の危険が存在する間に提起できます(民法201条2項)。
占有回収の訴え
占有を奪われた時から1年以内に提起しなければなりません(民法201条3項)。占有回収の訴えを提起したとき、勝訴した場合は、その間、占有を失わなかったものとみなされます(民法203条ただし書)。
| 種類 | 提起期間 |
|---|---|
| 占有保持 | 妨害の存する間、または妨害消滅後1年以内 |
| 占有保全 | 妨害の危険の存する間 |
| 占有回収 | 占有を奪われた時から1年以内 |
占有訴権と所有権に基づく訴えの関係
占有の訴えは本権の訴えを妨げず、本権の訴えも占有の訴えを妨げません。そのため、占有訴権と、所有権などの本権に基づく訴えは別に提起できます(民法202条1項)。
ただし、占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判することはできません(同条2項)。もっとも、占有回収の訴えに対し、所有権に基づく反訴を提起することは許されます。
