抵当権と賃借権の優先関係とは?抵当権設定前後の違いを解説

抵当権が設定された不動産を借りていると、抵当権が実行された後も賃借権を主張できるのかが問題になります。ポイントは、賃借権が抵当権の設定登記より前に対抗要件を備えていたかです。

抵当権と賃借権の優先関係は「設定登記の前後」で決まる

抵当権が実行されると、不動産は競売にかけられ、買受人が新しい所有者になります。このとき、賃借人が買受人に対して賃借権を主張できるかどうかが、抵当権と賃借権の優先関係の問題です。

賃借権の状態 原則的な扱い
抵当権設定登記前から対抗要件を備えている 抵当権者や競売の買受人に対抗できる
抵当権設定登記後に成立した 抵当権者や買受人には対抗できない

ここでいう「対抗できる」とは、抵当権が実行されても、賃借権の存在を新しい所有者に主張できるという意味です。

抵当権設定前から対抗要件を備えた賃借権は優先する

抵当権の設定登記より前に賃借権が対抗要件を備えていれば、抵当権が実行された後も、賃借人は買受人に賃借権を主張できます。そのため、買受人から直ちに明渡しを求められる関係にはなりません。

賃借権の対抗要件

  • 賃借権そのものの登記があること
  • 土地の賃貸借で、借地上の建物について所有権などの登記があること
  • 建物の賃貸借で、建物の引渡しを受けていること

例えば、建物の所有者が抵当権を設定する前に、賃借人がその建物の引渡しを受けていたとします。この場合、後に抵当権が実行されても、賃借人は買受人に対して賃借権を主張できます。

抵当権設定後の賃借権は原則として対抗できない

抵当権の設定登記後に賃貸借契約を結び、賃借人が建物の引渡しなどの対抗要件を備えたとしても、原則として抵当権者や競売の買受人には賃借権を主張できません。抵当権が実行されれば、買受人に不動産を明け渡す必要があります。

つまり、対抗要件を備えているかだけでなく、その時期が抵当権設定登記の前か後かが重要です。

例外:抵当権者の同意の登記がある場合

抵当権設定後の賃借権でも、次の要件をすべて満たせば、同意した抵当権者に対抗できます。

  1. 民法605条に基づく賃借権の登記があること
  2. 賃借権の登記前に登記された抵当権を持つすべての抵当権者が同意すること
  3. その同意の登記があること

借地上の建物の登記や、建物の引渡しといった借地借家法上の対抗要件だけでは、この例外には該当しません。必要なのは、賃借権の登記と抵当権者の同意の登記です。

対抗できない建物賃借人には引渡しの猶予がある

抵当権者に対抗できない賃貸借により抵当建物を使用または収益している者は、建物の競売における買受人が買い受けた時から6か月を経過するまでは、建物の引渡しを猶予されます。

ただし、賃借人は建物の使用の対価を買受人に支払う必要があります。買受人が相当の期間を定めて1か月分以上の支払いを催告し、その期間内に支払いがないときは、買受人は直ちに建物の明渡しを請求できます。この引渡しの猶予は、建物の賃借人に適用される制度です。