手付とは、売買契約を結ぶ際に、買主から売主へ交付する金銭などをいいます。契約を結んだ証拠や、契約を解除するための手付として機能します。
手付の種類について特別な合意がない場合、原則として解約手付と推定されます(民法557条1項、最判昭29・1・21)。
手付とは?3種類の意味と解約手付の推定
手付の意味
手付は、売買契約の締結に際して買主から売主に交付される金銭などをいいます。
手付の3種類
- 証約手付:売買契約が成立したことを示すための手付
- 解約手付:相手方が履行に着手するまでは、特別な理由がなくても、一方から契約を解除できる趣旨で交付される手付
- 違約手付:債務不履行があった場合の損害賠償の予定や違約罰として交付される手付
手付の種類によって、解除できるかどうかや、解除時に生じる効果が異なります。
解約手付による契約解除の条件
買主は手付を放棄して解除できる
解約手付の場合、売主が契約の履行に着手する前であれば、買主は手付を放棄して契約を解除できます。
たとえば、買主が売主に50万円を手付として渡していた場合、買主はその50万円を放棄することで解除できます。
売主は手付の倍額を現実に提供して解除できる
売主は、買主が履行に着手する前であれば、受け取った手付の倍額を現実に提供して契約を解除できます。「倍額を支払う」と伝えるだけでは足りません。手付が50万円なら、売主は100万円を実際に提供する必要があります。
相手方が履行に着手した後は解除できない
解約手付による解除ができるのは、解除しようとする当事者の相手方が履行に着手するまでです。自分が先に履行に着手していても、相手方がまだ履行に着手していなければ、この規定による解除ができます。
「履行に着手」とは?解除できる時期の判断
履行の着手の意味
履行に着手したとは、客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部を行ったこと、または履行の提供に不可欠な前提行為をしたことをいいます(最大判昭40・11・24)。
不動産売買で、買主が所有権移転登記を受けた場合は、履行の着手にあたります。この後は、売主は手付の倍額を提供しても、解約手付による解除ができません。
解約手付による解除の効果
解約手付による解除は、相手方に契約違反などの特別な理由がなくてもできます。解約手付による契約解除がなされた場合、相手方に損害賠償を請求することはできません(民法557条2項)。
まとめ
- 手付とは、売買契約の締結時に買主から売主へ交付する金銭などです。
- 手付には、証約手付・解約手付・違約手付があります。
- 特別な合意がなければ、解約手付と推定されます。
- 買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供して、相手方の履行着手前に解除できます。
- 相手方が履行に着手した後は解約手付による解除ができず、損害賠償請求もできません。
