賃借人が自分で修繕費を支払った場合でも、必ず全額を返してもらえるとは限りません。費用が、賃貸人の負担に属する必要費に当たるのか、改良のための有益費に当たるのかによって、請求できる時期や金額が変わります。
賃借人の修繕費は「必要費」か「有益費」かで扱いが変わる
原則として修繕義務を負うのは賃貸人
賃貸人は、賃借物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負います。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要になった場合、賃貸人は修繕義務を負いません。
賃借人が自ら修繕できる場合
賃借物が修繕を要するとき、賃借人は、賃貸人がすでに知っている場合を除き、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければなりません。もっとも、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、または賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、相当の期間内に必要な修繕をしない場合や、急迫の事情がある場合には、賃借人が修繕できます。
| 区分 | 内容 | 請求時期 |
|---|---|---|
| 必要費 | 賃貸人の負担に属する必要な費用 | 支出後、直ちに |
| 有益費 | 賃借物について支出した改良のための費用 | 賃貸借の終了時 |
必要費は支出後すぐに償還を請求できる
必要費とは
賃借人が賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、その費用は必要費に当たります。なお、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合の費用は、賃貸人の負担に属する必要費とはいえません。
必要費の償還時期
賃借人が必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求できます。賃貸借の終了時まで待つ必要はありません。
有益費は賃貸借の終了時に償還を請求できる
有益費とは
賃借人が賃借物について有益費を支出した場合であって、その価格の増加が現存するときは、有益費の償還を請求できます。ただし、支出しただけで直ちに請求できるわけではありません。
賃貸人が償還する金額
有益費について賃貸人が償還するのは、賃借人が支出した金額または賃借物の増価額のいずれかであり、賃貸人が選択します。請求できるのは賃貸借の終了時であり、支出直後ではありません。なお、賃貸人の請求に基づき、裁判所が相当の期限を付与することがあります。
費用償還請求には期限がある
賃貸物を返還してから1年以内に請求する
賃借人の費用償還請求権は、賃貸人に目的物を返還した時から1年以内に行使しなければなりません。必要費は支出後すぐ、有益費は賃貸借の終了時に請求できますが、返還後1年という期限にも注意が必要です。
請求前に確認するポイント
- 費用が必要費と有益費のどちらに当たるか
- 賃貸人の負担に属する費用か
- 賃貸人に修繕の必要性を通知したか
- 賃借物を返還してから1年以内か
