不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害する行為を意味します。不法行為を行った加害者は、被害者に生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。ただし、他人に損害を与えただけで直ちに不法行為が成立するわけではありません。
不法行為の成立には、次の5つの要件が必要です。
- 損害が発生していること
- 加害者に故意または過失があること
- 加害者に責任能力があること
- 行為が違法であること
- 加害行為と損害との間に因果関係があること
不法行為の成立要件5つ
1.損害が発生していること
不法行為が成立するには、損害が発生している必要があります。不法行為は財産権の侵害に限らず、身体、自由、名誉などを侵害した場合にも成立します(民法710条)。財産以外の損害に対する賠償金は、一般に慰謝料と呼ばれます。
2.故意または過失があること
民法は過失責任主義を採用しているため、加害者に故意または過失がなければ、原則として不法行為は成立しません。したがって、不可抗力により、やむを得ず他人に損害を与えた場合には、原則として不法行為は成立しません。
3.責任能力があること
責任能力とは、自己の行為の責任を認識できる知能を意味し、加害者ごとに個別に判断されます。およそ12歳前後から責任能力が認められると解されています。
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負いません(民法712条)。また、精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負いません。ただし、故意または過失によって一時的にその状態を招いたときは、その賠償の責任を負います(民法713条)。
4.行為が違法であること
違法な行為とは、他人の権利または法律上保護される利益を侵害することです。対象は財産権に限らず、生命、身体、自由、名誉なども含まれます。
ただし、正当防衛や緊急避難に当たる場合は、違法性がないため、不法行為が成立しない場合があります(民法720条)。正当防衛は、他人の不法行為に対し、自己または第三者の権利もしくは法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず不法行為者または第三者に対して加害行為をした場合に成立します。緊急避難は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるため、その物を損傷した場合に成立します。
5.加害行為と損害との間に因果関係があること
因果関係とは、その行為の結果として通常予見できる相当の損害、つまり「相当因果関係」を意味します。加害者の行為を受け、それに相当する損害が被害者に生じたことが必要です。
訴訟における因果関係の立証は、被害者側が負います。ただし、一点の疑義も許されない自然科学的証明までは必要なく、全証拠を総合検討し、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持てる高度の蓋然性を証明すれば足りるとされています。
まとめ
不法行為の成立要件は、①損害の発生、②故意または過失、③責任能力、④違法性、⑤加害行為と損害との因果関係です。これら5つの要件を満たす必要があります。
