パトカーの追跡で第三者が事故に遭った場合の国家賠償責任とは?

パトカーが逃走車両を追跡している最中、逃走車両が別の車や歩行者に衝突することがあります。このような場合、被害者は警察や自治体に損害賠償を請求できるのでしょうか。

事故が起きたという事実だけで、直ちに国家賠償責任が認められるわけではありません。重要なのは、パトカーの追跡が国家賠償法上「違法」と評価されるかどうかです。

パトカーの追跡には国家賠償法1条1項が適用される

国家賠償責任が認められる基本的な要件

国家賠償法1条1項に基づく責任が成立するには、主に次の条件が必要です。

  • 警察官が公権力の行使に当たる職務を行っていたこと
  • 職務上の行為について、故意または過失があったこと
  • その行為が違法であったこと
  • 違法な行為によって第三者に損害が生じたこと

逃走車両をパトカーで追跡する行為は、警察官の職務として行われる公権力の行使に当たります。ただし、追跡中に事故が発生しただけでは、これらの要件をすべて満たすとは限りません。

賠償義務を負うのは原則として都道府県

国家賠償法では、原則として警察官個人ではなく、国または公共団体が被害者に賠償します。都道府県警察の警察官が交通犯罪の捜査や追跡をしていた場合、原則としてその警察官が属する都道府県が責任を負います。国が当然に賠償義務を負うわけではありません。

パトカーの追跡が「違法」と判断される基準

追跡が必要な職務行為だったか

追跡が職務目的を遂行するうえで必要だったかが、検討されます。追跡が職務目的を遂行するうえで不必要であった場合は、違法と評価される可能性があります。

追跡の方法や継続が相当だったか

追跡に必要性があっても、逃走車両の逃走の態様や道路交通状況などから予測される被害発生の具体的な危険性に照らし、追跡の開始・継続・方法が不相当であれば、違法となることがあります。

最高裁判所も、追跡が違法となるのは、職務上不必要であった場合、または逃走車両の走行態様や道路交通状況から予測される具体的な危険に照らし、追跡の開始・継続・方法が不相当であった場合であると判断しています(最判昭61・2・27)。

事故が起きた場合でも国家賠償責任が認められないことがある

事故の発生だけでは違法とはいえない

追跡の必要性と方法が相当であれば、第三者が事故に遭っても、国家賠償責任が否定される可能性があります。

一方、危険が予測される状況で追跡を続けたり、追跡の必要性がないのに追跡を開始したり、方法が不相当であったりした場合は、違法と判断される余地があります。

責任が認められる場合の結論

パトカーの追跡が国家賠償法1条1項上違法であり、警察官の故意または過失、追跡と損害との因果関係が認められれば、原則として都道府県などの公共団体が損害賠償責任を負います。逆に、追跡に必要性があり、危険に応じた相当な方法で行われていた場合は、事故が発生しても責任が認められないことがあります。