参議院議員の定数不均衡訴訟とは、選挙区ごとの人口や選挙人数と、割り当てられた議員定数のバランスが崩れ、投票価値が不平等になっているとして、選挙人が選挙の無効を求める訴訟です。主に、議員1人当たりの選挙人数にどれほど差があるかが争われます。
投票価値の平等とは
憲法14条1項の法の下の平等は、選挙人となる資格を平等にするだけでなく、各投票が選挙結果に及ぼす影響力も、できる限り平等であることを求めています。つまり、選挙区によって同じ1票の力に大きな差があれば、投票価値の平等が問題になります。
各選挙区の選挙人数を、その選挙区の議員定数で割った数を比較し、最も差が大きい選挙区間の比率を最大較差といいます。ただし、最大較差が大きいというだけで、直ちに違憲となるわけではありません。参議院の制度上の特徴や、較差が続いた期間、是正に向けた国会の対応などを総合して判断されます。
参議院の定数不均衡を判断する基準
最高裁は、参議院が衆議院とは異なる役割を担うことを踏まえ、国会に一定の立法裁量を認めています。参議院には6年の任期、半数改選、解散がないことなどの特徴があり、民意を安定的に反映させるという制度上の考慮が認められてきました。また、都道府県を選挙区の単位とし、地域の意思を反映させる仕組みにも一定の合理性があるとされました。
もっとも、参議院であることを理由に、投票価値の平等が無制限に後退するわけではありません。判断では、主に次の点が考慮されます。
- 投票価値の不平等がどの程度著しいか
- その差を正当化できる特別な理由があるか
- 不平等な状態が相当期間続き、合理的な是正が行われていないか
なお、違憲状態と違憲は同じ意味ではありません。違憲状態とは、投票価値の差が看過できない程度に達した状態です。その後、国会が合理的な期間内に制度の見直しを進めている場合には、直ちに定数配分規定そのものが違憲と判断されないことがあります。
参議院議員定数不均衡訴訟の主な判例
最大判昭和58年4月27日
昭和52年選挙では最大較差が1対5.26でした。最高裁は、参議院の特殊性から、投票価値の平等には一定の譲歩が認められると判断しました。定数配分の制定当初は憲法に適合していたとしても、人口移動によって著しい不平等状態が生じ、それが相当期間継続し、その状態を是正する措置を講じないことが国会の裁量の限界を超える場合には、憲法違反となるとしました。
最大判平成24年10月17日
平成22年選挙の最大較差は1対5.00でした。最高裁は、参議院の選挙だからというだけで投票価値の平等を軽視できないと判示し、選挙当時は違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態にあったとしました。ただし、制度改革の検討が進められていたことなどから、定数配分規定自体は違憲ではないと判断しました。
最大判平成29年9月27日・最大判令和2年11月18日
平成28年選挙の最大較差1対3.08、令和元年選挙の最大較差1対3.00については、いずれも著しい不平等状態には至っていないとして合憲とされました。
まとめ
参議院議員の定数不均衡訴訟は、選挙区間の人口と議員定数の偏りが、憲法上の投票価値の平等に反するかを争う訴訟です。参議院の特殊性から国会には一定の裁量がありますが、著しい不平等が長期間続き、合理的な是正もされない場合には、その裁量の限界を超える可能性があります。
