不動産の売買契約を解除した後、元の買主がその不動産を第三者へ売却することがあります。この場合、契約を解除した売主と第三者のどちらが所有権を主張できるのでしょうか。
契約を解除した売主が第三者に所有権を対抗するには、登記が必要です。売主が備える登記は、元の買主から売主へ所有権を戻す「回復登記」です。
契約解除後に第三者へ所有権を主張するには登記が必要
解除した側も登記がなければ対抗できない
売主が買主の債務不履行などを理由に売買契約を解除した後、買主が不動産を第三者へ譲渡したとします。このとき、売主が第三者に返還を求めるには、売主名義の回復登記を備えている必要があります。
解除の意思表示をしただけで、第三者に対する所有権の主張まで完了するわけではありません。第三者が先に登記を備えている場合、売主は、その第三者に不動産の返還を請求できません。
登記の先後で所有権の対抗関係が決まる
契約解除によって、買主から売主へ所有権を戻す関係が生じます。一方、買主から第三者への譲渡も存在するため、解除後は、買主から売主と第三者へ二重に譲渡された場合と同じように扱われます。
その結果、売主と第三者のうち、先に登記を備えた側が、相手に対して所有権を対抗できます。この考え方は、解除による原状回復を定める民法545条1項と、不動産の権利変動について登記を対抗要件とする民法177条を根拠とします。
なぜ契約解除後の第三者には登記が必要なのか
解除によって契約関係は原状回復される
契約が解除されると、当事者は契約がなかった状態に戻すため、原状回復義務を負います。売主は受け取った代金を返し、買主は不動産を返還するのが基本です。
ただし、買主がすでに不動産を第三者へ譲渡していた場合、解除しただけで第三者から当然に不動産を取り戻せるとは限りません。
解除後は新たな物権変動として扱われる
解除後に買主が第三者へ譲渡したケースでは、売主への所有権回復と第三者への譲渡が並んで存在します。そのため、売主が第三者に所有権を対抗するには、回復登記によって自分の権利を公示する必要があります。
解除前の第三者との違い
解除前の第三者が保護されるには登記が必要
第三者への譲渡が契約解除より前であった場合、解除した売主が第三者に返還を求められるかは、第三者が登記などの対抗要件を備えているかによって判断されます。登記を備えた解除前の第三者は保護されます。
一方、解除後の第三者との関係では、売主自身も登記がなければ所有権を対抗できません。
「解除前」と「解除後」を時系列で区別する
例えば、売主が買主へ土地を売却した後、契約を解除し、その後に買主が第三者へ土地を譲渡したとします。この場合は解除後の第三者です。売主と第三者のどちらが先に登記を備えたかを確認します。
解除後の第三者との関係を判断する手順
- 元の売買契約が有効に成立していたか確認する
- 売主が契約を解除した時点を確認する
- 第三者への譲渡が解除の前か後かを確認する
- 売主が回復登記を備えているか確認する
- 売主と第三者のどちらが先に登記を備えたか比較する
まとめ
契約解除後に元の買主が不動産を第三者へ譲渡した場合、解除した売主は、登記がなければ第三者に所有権を対抗できません。売主が備えるべきなのは、買主から売主へ所有権を戻す回復登記です。
解除後は、売主と第三者への二重譲渡と同じように扱われ、先に登記を備えた側が所有権を対抗できます。まずは、第三者への譲渡と契約解除のどちらが先だったのかを確認することが重要です。
