逮捕や拘禁、住居の捜索・所持品の押収は、人の身体の自由やプライバシーを大きく制限します。そこで日本国憲法は、捜査機関が自由にこれらを行えないよう、一定の手続と被疑者の権利を保障しています。
この記事では、憲法33条・34条・35条を中心に、令状主義の意味と例外を解説します。
被疑者の権利と令状主義の基本
被疑者とは
被疑者とは、犯罪の嫌疑を受けて捜査の対象となっているものの、まだ起訴されていない人をいいます。起訴された後の「被告人」とは区別されます。
令状主義とは
令状主義とは、国が人の身体や住居、所持品などを強制的に制限する場合、原則として裁判官が発する令状を必要とする考え方です。令状によって、捜査機関の判断だけで逮捕や捜索が行われることを防ぎ、人身の自由やプライバシーを守ります。
憲法31条は、生命や自由を奪ったり刑罰を科したりするには、法律に基づく適正な手続が必要であると定めています。憲法33条以下は、刑事手続上の基本原則である適正手続を具体化した規定です。
逮捕に関する被疑者の権利――憲法33条
逮捕の原則は令状主義
現行犯として逮捕される場合を除き、原則として、権限を有する司法官憲、つまり裁判官が発し、逮捕の理由となる犯罪を明示した令状がなければ逮捕されません。
逮捕における令状主義の例外
- 現行犯逮捕:現行犯として逮捕する場合
- 緊急逮捕:刑事訴訟法に規定する緊急逮捕の場合
このように、憲法33条は逮捕について令状主義を原則としつつ、現行犯逮捕と緊急逮捕を例外としています。
抑留・拘禁に関する被疑者の権利――憲法34条
憲法34条は、身体を拘束された人が、その理由を直ちに告げられる権利を保障しています。「抑留」は身体の一時的な拘束、「拘禁」は継続的な拘束を意味します。
また、被疑者には直ちに弁護人に依頼する権利があります。これは、弁護人を選任することを妨げられないというだけでなく、弁護人に相談し、助言を受けるなど、弁護人から実質的な援助を受ける機会も含みます。
さらに、拘禁には正当な理由が必要です。本人が求めた場合、その理由は、本人と弁護人が出席する公開の法廷で直ちに示されなければなりません。
捜索・押収に関する被疑者の権利――憲法35条
捜索・押収の原則
憲法35条は、住居、書類、所持品について、侵入・捜索・押収を受けない権利を保障しています。原則として、捜査機関がこれらを行うには、次の内容を備えた令状が必要です。
- 正当な理由に基づいて発せられていること
- 捜索する場所が明示されていること
- 押収する物が明示されていること
令状は、権限を有する司法官憲、つまり裁判官が発します。また、捜索・押収は「各別の令状」により行う必要があります。これは、捜索・押収ごとに個別の令状が必要であるという意味です。
捜索・押収における例外
憲法35条は、憲法33条の場合を例外としています。例外的に、現行犯の場合と令状逮捕の場合には、住居に侵入し、捜索・押収することが許されます。
このように、令状主義は逮捕だけでなく、捜索・押収にも要求されます。憲法33条から35条は、被疑者の身体の自由や住居、書類、所持品に関する権利を保障しています。
