電気・ガス・通信サービスなどでは、事業者があらかじめ作成した条項を使い、多数の利用者と契約します。このとき問題となるのが、約款の内容が契約に含まれるのか、利用者は約款を確認できるのか、後から内容を変更できるのかという点です。民法は、定型約款について「合意」「内容表示」「変更」のルールを定めています。
定型約款とは
定型取引の意味
定型取引とは、ある特定の者が不特定多数の相手方と行い、取引内容の全部または一部を画一的にすることが、当事者双方にとって合理的な取引です。鉄道・航空運送、水道・ガス・電気の供給契約などが例に挙げられます。
定型約款の意味
定型約款とは、定型取引で契約の内容とする目的で、特定の者があらかじめ準備した条項の総体です。すべての「約款」が民法上の定型約款になるわけではなく、定型取引に用いられるものが対象です。
定型約款の合意に関するルール
原則:個別の条項も合意したものとみなされる
定型取引を行うことに合意し、定型約款を契約内容とする旨の合意をした場合、または定型約款準備者があらかじめその定型約款を契約内容とする旨を相手方に表示していた場合には、約款に含まれる個別の条項についても合意したものとみなされます。
たとえば、クラウド会計サービスの利用開始時に、利用規約を契約内容とすることが示されていれば、利用者が全条項を一つずつ読んでいなくても、原則としてその約款が契約内容になります。単にサービスを申し込んだことと、約款を契約内容にすることは区別して考える必要があります。
定型約款の内容表示に関するルール
相手方から請求された場合の表示義務
定型約款準備者は、定型取引の合意をする前、または合意後の相当な期間内に相手方から請求を受けた場合、原則として約款の内容を示さなければなりません。請求を受けた事業者は、遅滞なく、相当な方法で表示します。
定型約款の変更に関するルール
個別の合意がなくても変更できる場合
定型約款準備者は、一定の場合、利用者一人ひとりから同意を取り直さなくても約款を変更できます。その場合、変更後の条項について合意があったものとみなされます。
変更が認められる場合
代表的なのは、変更が相手方の一般の利益に適合するときです。そのほか、民法が定める場合にも変更が認められます。ただし、事業者が変更を望んだだけで、いつでも一方的に契約内容を変えられるわけではありません。
たとえば、継続利用するオンラインサービスの規約が変更された場合、変更後の条項が契約内容になるかは、民法上の変更要件を満たすかどうかによって判断されます。合意のルールと異なり、変更では個別の同意を取り直さなくてもよい場合がある点に注意が必要です。
まとめ
- 定型約款は、定型取引で契約内容とするためにあらかじめ準備された条項の総体です。
- 契約内容とする合意などがあれば、個別の条項も合意したものとみなされます。
- 相手方から請求された場合、定型約款準備者は原則として内容を表示しなければなりません。
- 定型約款は、相手方の一般の利益に適合するときなど、民法上の要件を満たせば個別の合意なく変更できます。
「合意」「内容表示」「変更」は別々のルールです。約款が契約内容になったか、内容の表示を請求できるか、変更が有効かを分けて確認しましょう。
