賃貸借契約では、契約期間が終わった後も借主が物件を使い続け、貸主もそれを知りながら何も言わないことがあります。この場合、民法上は「黙示の更新」があったものと推定されます。
ただし、更新後の契約期間は、元の契約期間がそのまま繰り返されるわけではありません。原則として、期間の定めのない賃貸借になります。
賃貸借契約の黙示の更新とは
黙示の更新が成立する条件
民法上、次の事情があると、従前と同じ条件で賃貸借を続けたものと推定されます。
- 賃貸借契約の期間が満了した
- 期間満了後も、借主が目的物の使用・収益を続けている
- 貸主がその事実を知っている
- 貸主が異議を述べていない
もっとも、「推定」とは、必ず新しい契約書を作成した場合と同じになるという意味ではありません。更新後の賃料など、従前の契約条件は、同一の条件として引き継がれます。
黙示の更新後の期間と解約申入れ
更新後は「期間の定めのない賃貸借」になる
民法上、黙示の更新が成立した後の賃貸借は、元の契約と同じ期間で更新されるのではなく、期間の定めがない契約になります。そのため、契約期間の満了を待たなくても、貸主・借主のいずれからでも解約を申し入れることができます。
解約申入れから契約が終了するまでの期間
解約申入れをした時点で、直ちに契約が終了するわけではありません。目的物に応じて、次の期間が経過すると賃貸借が終了します。
| 賃貸借の目的物 | 解約申入れから終了まで |
|---|---|
| 土地 | 1年 |
| 建物 | 3か月 |
| 動産・貸席 | 1日 |
したがって、建物の賃貸借が民法上の黙示の更新になった場合、原則として、解約申入れから3か月で契約が終了します。
借地・借家では借地借家法の「法定更新」に注意
黙示の更新と法定更新は別の制度
建物所有を目的とする土地の賃貸借や建物の賃貸借には、民法619条の黙示の更新とは別に、借地借家法による「法定更新」が適用される場合があります。したがって、これらの契約をすべて黙示の更新として判断できるわけではありません。
借地・借家の法定更新後の期間
借地権では、建物がある場合に、借地権者が更新を請求したにもかかわらず賃貸人が遅滞なく異議を述べないとき、または期間満了後も使用を続け、賃貸人が遅滞なく異議を述べないときなどに、法定更新となることがあります。更新後の期間は、最初の更新では20年、2回目以降は10年です。
借家権では、期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨などの通知がなく、または期間満了後も使用が続き賃貸人が遅滞なく異議を述べない場合などに、法定更新となることがあります。この場合、更新後は期間の定めがないものとされます。
なお、借地・借家で賃貸人が更新に異議を述べるには、法律上、土地や建物を使用する必要性や立退料の支払などの正当な事由が必要とされます。
