GPS捜査とは、捜査対象とされる車両などにGPS端末を取り付け、端末から位置情報を取得して移動状況を調べる捜査です。
結論として、本人の承諾なく車両にGPS端末を取り付け、位置情報を継続的・網羅的に把握するGPS捜査には、令状が必要です。最高裁は、GPS捜査を令状なしで行うことのできない処分と判断しました。
GPS捜査に令状が必要となる理由
GPS捜査は、単に公道を走る車両を目で確認したり、道路上の様子を撮影したりする捜査とは異なります。GPS端末を使えば、対象車両やその使用者の所在・移動状況を逐一把握できます。
- 個人の行動を継続的かつ網羅的に把握できる
- 個人のプライバシーが強く保護されるべき場所や空間に関わる情報も含まれる
- 本人の意思に反して、所持品に機器を秘密裏に取り付ける
このため、個人のプライバシーを侵害し得るものであり、公権力が個人の私的領域に入り込む捜査と評価されます。
憲法35条とGPS捜査の関係
憲法35条1項は、住居、書類、所持品について、正当な理由に基づく令状がなければ、侵入・捜索・押収を受けない権利を保障しています。同条2項も、捜索・押収は裁判官が発する各別の令状によって行うことを求めています。これが令状主義です。
憲法35条の保障は、条文に挙げられた住居・書類・所持品だけに限られません。最高裁は、これらに準じる私的領域に侵入されない権利も保障の対象になると判断しました。
GPS端末を秘密裏に取り付け、本人の行動を継続的に把握する捜査は、個人の意思を制圧して憲法が保障する重要な法的利益を侵害する「強制の処分」に当たります。そのため、刑事訴訟法上の特別な根拠規定がなければ許されず、一般的には令状を必要としない処分と同視すべき事情もないことから、令状がなければ実施できないとされました。
GPS捜査に関する最高裁判例
最大判平成29年3月15日
複数の共犯者が存在すると疑われていた窃盗事件の捜査で、捜査機関が本人の承諾を得ず、令状も取得しないまま、犯行に関係するとされる車両にGPS端末を取り付け、数か月にわたり位置情報を検索していました。
最高裁は、GPS捜査について、対象車両と使用者の所在・移動状況を逐一把握し、個人の行動を継続的・網羅的に把握するものと指摘しました。そして、私的領域への侵入を伴う強制の処分であり、令状がなければ行えない処分と判断しました。
まとめ
- 本人に無断でGPS端末を取り付け、位置情報を継続的に取得する捜査には、令状が必要
- GPS捜査は、個人のプライバシーを侵害し得る
- 憲法35条は、住居・書類・所持品などへの侵入・捜索・押収について令状主義を定めている
- 最高裁はGPS捜査を強制の処分と判断した
なお、憲法35条の令状主義には、憲法33条の場合、すなわち現行犯の場合と令状逮捕の場合に関する例外があります。しかし、GPS捜査について、一般的に令状を要しない処分と同じ扱いができる事情はないとされています。
