加害公務員を特定できなくても国家賠償請求できる?加害行為不特定の判例を解説

加害公務員を特定できなくても国家賠償請求はできる

結論として、加害公務員や、どの公務員のどの行為が損害を生じさせたのかを特定できなくても、国家賠償請求が認められる場合があります。

もっとも、「公務員が関与していたようだ」というだけでは不十分です。国家賠償法1条1項では、国または公共団体の公権力の行使に当たる公務員が、その職務を行うについて、故意または過失によって違法に他人へ損害を加えたことが必要です。

「特定できない」とは何が分からない状態か

公務員による一連の職務上の行為の過程で損害が発生したものの、その中のどの公務員のどのような違法行為によるものかを個別に特定できない状態をいいます。

加害行為が特定できなくても請求できる4つの条件

1. 公務員による一連の職務上の行為であること

公務員による一連の職務上の行為の過程で損害が発生し、それが国家賠償法1条1項の「公権力の行使」に当たる必要があります。

2. 一連の行為の中に故意または過失による違法行為があること

誰の行為か特定できなくても、その一連の行為のうちのいずれかに、行為者の故意または過失による違法行為が存在しなければなりません。

3. その違法行為がなければ損害が発生しなかったといえること

一連の行為のうち、いずれかの違法行為がなければ損害が発生しなかったと認められることが必要です。

4. どの行為でも国または公共団体が責任を負う関係にあること

一連の行為のどの部分が違法であっても、その行為者の属する国または公共団体が賠償責任を負う関係にあることが必要です。この場合、加害行為が特定できないことだけを理由に、国または公共団体は責任を免れることができません。

加害行為不特定を認めた最高裁判例

最判昭和57年4月1日の判断

最高裁は、国または公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程で損害が発生した場合、具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものか特定できなくても、上記の条件を満たせば、国または公共団体は加害行為不特定を理由に賠償責任を免れないと判断しました。

この判例から、国家賠償請求では、常に加害公務員と加害行為を完全に特定しなければならないわけではないと分かります。

請求の相手は国または公共団体

国家賠償法1条1項の責任を負うのは、国または公共団体です。公務員が行政機関として賠償責任を負うものではなく、公務員個人もその責任を負いません。そのため、加害公務員を特定できなくても、責任主体となる国または公共団体を特定できれば請求を検討できます。

まとめ:特定できない場合でも一連の行為と因果関係が重要

加害公務員や加害行為が特定できないだけで、直ちに国家賠償請求ができなくなるわけではありません。ただし、一連の職務上の行為の中に故意または過失による違法行為があり、その違法行為がなければ損害が発生しなかったと認められ、どの行為であっても国または公共団体が賠償責任を負う関係にあることが必要です。